研究課題
骨や関節の健全な維持には、骨形成と吸収のバランスが重要であるが、歯周病における歯槽骨の喪失や関節リウマチにおける骨破壊などの炎症性骨病態では、破骨細胞による骨吸収が過剰となり異常な骨量減少をきたす。このため、炎症性骨疾患の病態理解と新規治療剤の創出のためには、破骨細胞の分化・活性化機序や、これらに与える炎症環境の影響を解明することが重要である。本研究では、昨年度までに、(1) 破骨細胞分化因子 Receptor Activator of Nuclear Factor κ B ligand (RANKL) の刺激によって発現変化のある分子群を同定するとともに、(2) RANKL 受容体である Receptor Activator of Nuclear Factor κ B (RANK) 結合タンパク質群のプロテオミクス手法による解析がほぼ完了したため、本年度は昨年度に引続き、 (3) 上記で同定された因子に関して、gain-of-function 実験や、loss-of-function 実験を行うことにより、破骨細胞前駆細胞内でそれらの因子がいかに機能しているのかについての詳細解析を行い、一部の破骨細胞分化シグナルの駆動因子については、その機能の一端を明らかにすることができた。さらに、まだ不完全ではあるが、(4) 解明されてきた分子機能について、システム生物学的アプローチを用いてさらに詳細な解析を加えようとしている。以上の検討から得られた結果は、最終年度である平成26年度に最大限の結果を得るための準備的調査として大変有意義であった。
2: おおむね順調に進展している
炎症が惹起する細胞の性状変化の要因となる細胞内因子について、各種オミックス解析や、RNAi 手法を用いた loss-of-function 実験、さらには、システム生物学的アプローチにより、解明を進められたため、この部分については、当初の計画以上の進展だと言えるが、昨年度と同様に、当該細胞の細胞表面マーカー、あるいは、その細胞を特徴づける細胞内分子の機能についての決定的な同定についてはまだ不十分であることも含めて総合的に考え、全般的な達成度については「(2) おおむね順調に進展している。」を選択した。
現在までの解析結果を考慮すると、研究方針に大きな変更を加える必要はないと考えられる。しかし、炎症性破骨細胞を特徴づけるような細胞表面マーカーや、これまでに同定した分子機能のより深い探索については不十分であるため、今後もこれらの解析について鋭意推進することで、細胞の性状変化についてより詳細に解明することを目指す。また、実験動物等を用いて個体での解析を行うことにより、今明らかにしつつある細胞内メカニズムが、疾病の病態形成にどのように関与するか、その病理学的な理解を深めるような実験を行うことで、より本質的な炎症性骨破壊病態の解明を目指す。
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PLoS ONE
巻: 8 ページ: e72105
10.1371/journal.pone.0072105
http://www.ak.med.kyoto-u.ac.jp/group_research/asagiriG.html