研究課題
我々は肝炎を誘発する可能性のある口腔細菌、あるいは口腔細菌由来物質の同定と、そのメカニズムの解析を目的として研究を進めてきた。この結果、歯周病菌のうちでPorphyromonas gingivalis が高脂肪食負荷したマウスに脂肪性の肝炎を誘発することを見出した。更に歯周病菌投与後、脂肪食負荷を続けると、ヒトの非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis, NASH)と同様の病状を示すことを見出した。これらの病態は、歯周病菌自体が肝臓に到達しなくても、歯周病菌などの産生するエンドトキシン(Lipopolysaccharide、LPS)自体によっても肝炎が起こることも見出した。これらのLPSによるNASH発症の分子メカニズムの解明も行い、レプチンが肝臓でのLPSの感受性を大きく高めることをあきらかにした。これらの成果を多くの外国雑誌に発表したが、そのうちの一つCell Metabolismにおいて、本研究の内容が大きく取り上げられ、その表紙を飾ることとなった。さらに現在では関連する多くの知見も見出しており、更なる研究成果が上がることが期待されている。
1: 当初の計画以上に進展している
研究実績の概要にも記載した通り、本研究において、本年度だけで3報の中心論文と、2報の派生する論文を発表した。これらはいずれもインパクトファクターを持つ国際雑誌であり、そのうちの一つは内分泌・代謝系の一流雑誌であるCell Metabolismに掲載されている。この内容は特に注目を集め、研究成果が雑誌の表紙を飾ることとなった。これらの客観的な事実から、本研究が当初の計画以上に進展しているのは明らかである。研究費の一部執行が遅れているが、計画の達成度は「成果から客観的に判断される」べきものであり、単に研究費の使用金額を持って測るのはナンセンスである。それ故に本研究が計画以上に進展していると考えている。
研究計画にも記載した通り、本年度の研究では歯周病菌のうちでPorphyromonas gingivalis が顕著な肝炎症状を呈したが、その為にかえって他の口腔細菌に関する興味がやや薄れているのが実情である。口腔内には様々な細菌が生息しており、その他の口腔細菌に関するより詳細な検討を行う必要がある。25年度は、これら他の口腔細菌に関する検討も進める予定である。同時に、歯周病菌によるLPS以外の作用メカニズムについても、より詳細な検討を加えていく予定である。
研究計画を進めていく上で、外注したDNA microarray の結果が年度内に報告されなかったため、24年度の研究経費に一部未使用額が生じたが、次年度に納入されるため、今年度行う予定の研究計画と合わせて実施する。また、本年度の他の研究費は計画通り使用された。25年度は計画通り研究費を使用していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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