研究課題/領域番号 |
24659826
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
杉田 誠 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (50235884)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 味覚 / 情動 / ニューロン |
研究概要 |
苦味を受容する味細胞に選択的に経ニューロン性トレーサー(WGA-DsRed)を発現するトランスジェニックマウスにおいて、苦味受容味細胞から移行したWGA-DsRedを受け取る苦味伝導路構成ニューロンの細胞体が橋結合腕傍核領域でどのような三次元的配置を示すかを、脳の連続切片からDsRedの蛍光を検出することにより解析した。橋結合腕傍核領域において苦味受容味細胞から移行したWGA-DsRedを受け取るニューロンは、後方のmedial側と前方のexternal lateral側に観察された。それらのWGA-DsRedにより標識されたニューロンの樹状突起構造を、WGA-DsRed標識ニューロンに蛍光色素lucifer yellowを注入することにより明らかにして分類を進めている。橋結合腕傍核の苦味伝導路構成ニューロンは樹状突起を多方向に伸張させる複雑な形態を有する。橋結合腕傍核領域の脳スライス標本において、苦味伝導路構成ニューロンの活性制御機構をホールセルパッチクランプ法を用い解析し、どのような神経伝達物質・神経修飾物質による入力をいかなる受容体により受容するかを解析した。後方medial側のニューロンはノルアドレナリンに反応性を示すとともに、神経伝達物質グルタミン酸の入力をAMPA受容体により受け取ることが観察された。前方external lateral側のニューロンはノルアドレナリンへの反応性を示さず、α-melanocyte stimulating hormoneにより活性化され、後方medial側の苦味伝導路構成ニューロンと前方external lateral側の苦味伝導路構成ニューロンでは、異なる神経伝達物質もしくは神経修飾物質によりシナプス伝達や伝達修飾が行われることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
橋結合腕傍核領域の脳スライス標本において、苦味伝導路構成ニューロンの細胞機能をホールセルパッチクランプ法を用い解析し、シナプス伝達機構およびシナプス伝達がホルモンや神経修飾物質によりいかに調節されるかを解明しようとしているが、WGA-DsRedにより蛍光標識される苦味伝導路構成ニューロンの数が限定されており、その限定された数の中でパッチクランプ記録を行うことが困難であるため。
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今後の研究の推進方策 |
橋結合腕傍核において苦味受容味細胞から移行したWGA-DsRedを受け取る苦味伝導路構成ニューロンに蛍光色素lucifer yellowを注入することにより樹状突起構造を解析すること、およびホールセルパッチクランプ法によるシナプス伝達機構とシナプス伝達の修飾機構の解析を継続する。また免疫組織学的に発現分子を検出することにより、ニューロン種を同定する。扁桃体における苦味伝導路構成ニューロンにおいても樹状突起構造の解析を同様に行い、ホールセルパッチクランプ法により細胞機能を解析し、どのような神経伝達物質による入力をいかなる受容体により受容するか、そしてそれらがホルモン・神経修飾物質によりどのように調節されるかを解析する。WGA-DsRedを受け取る苦味伝導路構成ニューロンの中で、感覚入力を嫌悪性不快情動の生成へと変換する責任的役割を果たすニューロン(群)の候補を同定する。ストラテジーとして味覚嫌悪学習をモデルとして苦味伝導路構成ニューロンの中で味覚嫌悪学習獲得後にのみ条件刺激(甘味刺激)により活動するニューロンをZif268の発現を検出することにより探索する。または苦味伝導路構成ニューロンの中で、嫌悪性不快情動を惹起する他の感覚刺激(内臓感覚・痛覚・嗅覚)によっても共通して活動するニューロン群をZif268の発現を検出することにより探索する。そして不快情動の生成に関与するニューロン候補を同定することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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