研究課題/領域番号 |
24659827
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中西 博 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20155774)
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研究分担者 |
林 良憲 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (80582717)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | TOLL様受容体と慢性疼痛 |
研究概要 |
本研究は「ミトコンドリアDNAがTLR9のリガンドとなり自然免疫システムを以上に活性化することで難治性疼痛を引き起こす」という仮説に対するエビデンスを確立することを目的とする。遺伝子Unc93bの点突然変異をもつ3DマウスではTLR3, TLR7ならびにTLR9のエンドソームへの移行が障害されており、このためこれらのTLRのリガンドに対する応答が欠如している。この3Dマウスを用いて疼痛に対する感受性を野生型マウスと比較した。まず熱過敏性に対する比較を行った結果、後肢足裏の皮内への生理食塩水注入群ではlatencyに有意な差は認められなかった。ところが、後肢足裏の皮内へのアジュバンド注入群では3Dマウスは野生型マウスに比べて有意に長いlatencyを示した。さらに神経障害性ならびに炎症性疼痛モデルにおいて疼痛閾値の比較を行った。神経障害性疼痛は脊髄神経L4レベルでの切断により作成し、炎症性疼痛は後肢足裏の皮内へのアジュバンド注入により作成した。その結果、どちらの慢性疼痛モデルにおいても3Dマウスは野生型マウスに比べて有意に高い疼痛閾値を示した。抗Iba1抗体を用いたミクログリアの免疫染色の結果、野生型マウスでは神経障害に伴って脊髄後角ミクログリアは活性化して数の増大ならびに形態変化を示すが、3Dマウスでは脊髄後角ミクログリアの活性化は有意低下していた。また、ミクログリアの活性化の指標としてインターロイキン-1β (IL-1β)の免疫染色を行った結果、脊髄後角ミクログリアにおけるIL-1β の発現は野生型マウスでは認められたが3Dマウスでは認められなかった。以上の結果より、3Dマウスでは神経障害ならびに末梢炎症に伴う脊髄後角ミクログリアの活性化が有意に減弱しており、その結果として慢性疼痛に対して抵抗性を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TLR3, TLR7ならびにTLR9のリガンドに対する応答が欠如している3Dマウスでは神経障害性ならびに炎症性疼痛びおいて有意に高い疼痛閾値を示した。さらに、3Dマウスでは神経障害ならびに末梢炎症に伴う脊髄後角ミクログリアの活性化が有意に減弱していることが明らかとなった。これらの結果は神経傷害性ならびに炎症性疼痛の発症において重要な役割を果たすことが知られている脊髄後角ミクログリアの活性化にTLR3, TLR7ならびにTLR9の活性化が関与することを強く示唆するものである。
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今後の研究の推進方策 |
神経障害性疼痛ならびに炎症性疼痛の発症には脊髄後角ミクログリアの活性化と伴に炎症性サイトカン(IFN- γ, IL-1β, TNF-α )の産生が重要なステップとなることが知られている。3DマウスのミクログリアではTLR3, TLR7ならびにTLR9のリガンドに対する応答が欠如しているため炎症性サイトカイン産生が低下している可能性が考えられる。そこで今後の研究の推進方策としてはまず神経障害ならびに末梢炎症に伴う脊髄後角におけるIFN- γ, IL-1βならびにTNF-α の産生をリアルタイムRT-PCRを用いて計測し、3Dマウスと野生型マウスとで比較を行う。また、3Dマウスならびに野生型マウスよりミクログリアを分離し、HMGB1などTLR3, TLR7ならびにTLR9に対する内因性リガンド刺激によるIFN- γ, IL-1βならびに TNF-α の産生分泌をELISA法ならびにイムノブロット法を用いて比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究ではリアルタイムRT-PCR、ELISA法ならびにイムノブロット法を用いた解析を主に行う予定です。このためリアルタイムRT-PCRに用いるプライマー、ELISAキット、ならびにイムノブロット法に用いる抗体の購入が必要であり、研究費は主に消耗品費に使用する予定である。
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