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2012 年度 実施状況報告書

減塩食/高塩分食摂取による塩味感受性・嗜好性・唾液成分変化に関わる分子基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24659828
研究機関九州大学

研究代表者

重村 憲徳  九州大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (40336079)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード国際情報交換
研究概要

実験動物には、高食塩嗜好性/アミロライト高感受性系統C57BL/6マウスを用いた。食塩嗜好性に直接的に影響する塩味受容体がアミロライド感受性上皮性ナトリウム(Na)チャネル(ENaC)であることが近年実証され、このENaCの味細胞における膜発現は副腎皮質ホルモン・アルドステロンにより亢進されることが報告されていたため、体内Na濃度の恒常性維持に重要な働きをするレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系に注目して解析を進めた。このホルモン系は体内Na欠乏および水分欠乏時に分泌促進されることが知られているため、23時間絶水による神経応答、行動応答の変化について解析を行なった。鼓索神経応答解析の結果、23時間絶水によりアミロライド感受性塩味応答の抑制がみられた。また驚いたことに甘味感受性の増強がみられた。その他の味質である酸味、苦味、うま味感受性には変化がみられなかった。行動応答解析では、23時間絶水により通常嫌う高濃度0.3M食塩水に対する飲水量が増加した。また甘味-苦味混合溶液に対する飲水量の増加もみられた。この他の味質に対する行動応答の変化はみられなかった。血中アンジオテンシンIIおよびアルドステロン濃度解析の結果、23時間絶水により両ホルモンともに有意な濃度上昇がみられた。発現解析の結果、味細胞においてアンジオテンシンII 1型受容体 AT1、アルドステロン受容体 MRが発現していることが明らかとなった。以上の結果から、体内Na/水分欠乏により、血中アンジオテンシンIIおよびアルドステロン濃度が上昇し、味細胞に発現する受容体に結合し、ENaCを介するアミロライド感受性塩味応答を抑制することで塩分摂取量を増加させ、さらに甘味感受性を増強することで糖/Na共輸送体を介してNa吸収を高める、味細胞における塩味/甘味受容を介した体内Na恒常性維持機構の存在が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究課題による研究成果の一部は以下の国際雑誌に掲載された。さらにThis Week in The Journalの中で特に重要な論文として取り上げられた。
Angiotensin II Modulates Salty and Sweet Taste Sensitivities.
Shigemura N, Iwata S, Yasumatsu K, Ohkuri T, Horio N, Sanematsu K, Yoshida R, Margolskee RF, Ninomiya Y.
J Neurosci. 2013 Apr 10;33(15):6267-77.

今後の研究の推進方策

DNAマイクロアレイ解析: “減塩食” vs “高塩分食”条件下で味細胞、視床下部、唾液腺、それぞれで発現に変化があった遺伝子を検出する。また、3組織で共通の発現様式示す遺伝子(橋渡し遺伝子)を検出する。さらにデータマイニング、ホモロジー検索、配列解析などからパスウェイ予測を行なう。
定量RT-PCR、2重in situ hybridizationおよび免疫組織化学法:候補遺伝子の発現変化について解析するために0, 1, 4, 12週に採取したマウスの茸状乳頭味蕾、視床下部、唾液線から抽出したtotal RNA(DNAマイクロアレイ解析に使用しなかったもの)をもちいて定量RT-PCRを行なう。候補遺伝子の細胞レベルでの発現変化について解析するためにそれぞれの週の味覚器(茸状、有郭乳頭)、視床下部、唾液腺における発現をin situ hybridizationおよび免疫組織化学法により経時的に解析する。この場合、候補遺伝子がどの味質と関連があるのかについて解析するために、味細胞マーカーにGFP/YFPを発現する遺伝子改変マウス(I型: オキシトシン受容体 (OXTR) - YFP knock-in mice, II型: Trpm5-GFP mice (甘味/うま味/苦味), T1r3-GFP mice (甘味/うま味)、III型: GAD67-GFP mice (酸味) を用いて共発現性の解析を行なう。

次年度の研究費の使用計画

マウス飼育代として40万円、薬品・試薬代として220万円、手術道具代として5万円、ガラス/プラスチック器具代として5万円、成果発表費として20万円、実験補助費として20万円を使用する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Angiotensin II Modulates Salty and Sweet Taste Sensitivities2013

    • 著者名/発表者名
      Shigemura N, Iwata S, Yasumatsu K, Ohkuri T, Horio N, Sanematsu K, Yoshida R, Margolskee RF, Ninomiya Y.
    • 雑誌名

      The Journal of Neuroscience

      巻: 33(15) ページ: 6267-6277

    • DOI

      10.1523

    • 査読あり
  • [雑誌論文] レプチンによる甘味感受性抑制2012

    • 著者名/発表者名
      重村憲徳、實松敬介、二ノ宮裕三
    • 雑誌名

      内分泌・糖尿病・代謝内科

      巻: 34(4) ページ: 371-378

  • [学会発表] Taste perception and food intake2013

    • 著者名/発表者名
      Shigemura N, Yoshida R, Yasumatsu K, Ohkuri T, Sanematsu K, Jyotaki M, Niki M, Ninomiya Y
    • 学会等名
      The 86th Annual Meeting of The Japanese Pharmacological Society
    • 発表場所
      Fukuoka, Japan
    • 年月日
      20130321-20130323
    • 招待講演
  • [学会発表] フォーカスセッション「塩の味覚のメカニズム」2012

    • 著者名/発表者名
      重村憲徳
    • 学会等名
      第35回日本高血圧学会総会
    • 発表場所
      名古屋、日本
    • 年月日
      20120920-20120922
    • 招待講演
  • [学会発表] Angiotensin II modulates taste sensitivities in mice2012

    • 著者名/発表者名
      Shigemura N, Ohkuri T, Horio N, Yasumatsu K, Ninomiya Y
    • 学会等名
      Association for Chemoreception Sciences 2012 Annual Meeting
    • 発表場所
      Huntington Beach, California
    • 年月日
      20120425-20120428
  • [備考] 九州大学 プレスリリース

    • URL

      http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2013/2013_04_09.pdf

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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