研究課題/領域番号 |
24659829
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小守 壽文 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00252677)
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研究分担者 |
森石 武史 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 技術職員 (20380983)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 骨細胞 / 破骨細胞 / 廃用性骨粗鬆症 / メカニカルストレス / Pdk4 |
研究概要 |
廃用性骨粗鬆症は、高齢化に伴う長期臥床患者や脳血管障害による下肢の麻痺患者等の増加により、急激に増加している。骨形成と骨吸収はカップリングし、バランスが保たれているが、非荷重状態では、骨形成は抑制され、骨吸収が亢進し、骨量が減少する。骨細胞ネットワークは、メカニカルストレスを感知、骨芽細胞・破骨細胞にシグナルを伝達し、骨量を調節していると考えられている。我々は、骨細胞ネットワークによる骨量調節に関わる分子を同定する目的で、骨細胞ネットワークが破綻した骨芽細胞特異的BCL2トランスジェニックマウスと野生型マウスで、非荷重時に誘導される遺伝子をマイクロアレイにて比較、野生型マウスで誘導され、骨細胞ネットワークが破綻したマウスでは誘導されない遺伝子を探索、Pdk4を同定した。Pdk4は、糖代謝でのエネルギー産生を抑制する酵素である。Pdk4ノックアウトマウスを作製したが、野生型マウスに見られる非荷重時の骨吸収亢進が、ノックアウトマウスでは見られなかった。Pdk4が、破骨細胞分化・活性化に関わる分子をリン酸化することにより活性化あるいは不活性化する可能性を追求した。最初に、Pdk4をベートとして酵母ツーハイブリッド法にて、Pdk4と結合する蛋白質の同定を試みた。しかし、同定された蛋白質には破骨細胞分化・活性化に関わる有望な蛋白質は含まれていなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Pdk4の新たな基質蛋白質を同定し、その破骨細胞分化における機能を明らかにすることが本研究目的である。最初に酵母ツーハイブリッド法にて、Pdk4と結合する蛋白質の同定を試みたが、破骨細胞分化・活性化に関わる有望な分子を得ることができなかった。次に、ミトコンドリア移行配列を持つPdk4アイソフォームおよびミトコンドリア移行配列を持たないPdk4アイソフォームをそれぞれ発現するアデノウィルスの作製に取りかかったが、高発現では細胞機能に影響するためか、高発現アデノウィルスの作製に時間がかかった。このため、二次元電気泳動(2-D Fluorescence Difference Gel Electrophoresis, 2D-DIGE)を用いてPdk4でリン酸化される基質蛋白質の同定に取りかかるのが、遅くなってしまった。C57BL/6に戻し交配をしたPdk4ノックアウトマウスの繁殖が悪く、Pdk4ノックアウトマウスの頭蓋冠より初代培養骨芽細胞を得るためのマウスの確保にも時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
Pdk4は、ミトコンドリア移行配列を持っており、大部分はミトコンドリアに存在すると考えられる。しかし、ミトコンドリア移行配列を持たないアイソフォームも存在し、これが破骨細胞分化・活性化に関わっている可能性がある。ミトコンドリア移行配列を持たないアイソフォームを発現するアデノウイルスを作製する。野生型マウスおよびPdk4ノックアウトマウスの頭蓋冠より初代培養骨芽細胞を得る。まず、この両者の細胞から蛋白を抽出、二次元電気泳動を行い、リン酸化による移動度の違いによりPdk4によってリン酸化される基質蛋白を探索する。次にPdk4ノックアウトマウスの初代培養骨芽細胞に、GFP発現アデノウイルスあるいは、ミトコンドリア移行配列を持たないPdk4アイソフォームとGFPを発現するアデノウイルスを導入、それぞれの細胞から蛋白を抽出し、同様に二次元電気泳動を行う。ゲル内スポットのマッチングを行い、スポットを切り取り、LC-MS/MSにより蛋白を同定する。候補分子発現アデノウイルスを野生型およびPdk4-/-初代骨芽細胞に感染、骨髄細胞と共培養し、破骨細胞形成を比較検討する。また、骨髄細胞にGFPあるいは選択された候補分子発現アデノウイルスを感染、M-CSF, RANKL存在下で破骨細胞形成を比較する。これにより骨芽細胞および骨髄細胞で、共通の分子が破骨細胞形成に関わっているか、Pdk4のあるなしが、候補蛋白質の破骨細胞形成調節能をどう変化させるか明らかにする。これらの実験により、破骨細胞分化に関わるPdk4の基質蛋白質を最終決定するとともにその機能を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
Pdk4ノックアウトマウスの初代骨芽細胞にGFPあるいはPdk4発現アデノウイルスを感染させ蛋白を抽出、2次元電気泳動によりPdk4でリン酸化される基質蛋白質の同定を試みている。700,000円前倒し支払い請求したが、Pdk4高発現アデノウイルスの作製に思いの外時間がかかったために、772,398円が次年度使用額となった。2次元電気泳動でコントロールのGFPアデノウイルス感染細胞蛋白と、Pdk4発現アデノウイルス感染細胞蛋白でスポットを比較する。この実験で使用する2D-DIGE試薬等に200,000円、このスポットの蛋白同定のために、LC-MS/MSを外注、175,000円/1サンプルx6サンプル=1,050,000円使用する。細胞培養関連試薬およびプラスチック器具に122,398円使用する。
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