研究課題
骨の再生治療では、動物由来骨補填材や自家骨などが用いられるが、拒絶や外科的侵襲が問題となっている。そこで我々は骨再生用ソースとして毛包細胞に着目し、その骨芽細胞への分化能を解析した。毛包細胞は、胚発生初期に出現する神経堤に由来する。そこで神経堤由来細胞がGFP(緑色蛍光タンパク質)で標識される遺伝子改変マウスから採取した毛包細胞を幹細胞用(無血清、B-27、FGF、EGF含有)と骨芽細胞分化用(血清、BMP-2含有)の培地中で培養し、GFP陽性細胞の形質変化を解析した。採取直後の毛包細胞には、神経堤由来細胞(GFP陽性細胞)が約10%存在し、幹細胞用培地で培養すると、増殖により3週間後には95%以上に達した。GFP陽性細胞はp75などの神経堤細胞関連因子を発現していたが、骨芽細胞分導培地中で培養するとp75の発現が低下し、アルカリホスファターゼ、Osterix、オステオカルシンなどの骨芽細胞関連遺伝子の発現が上昇した。β-glycerophosphate、アスコルビン酸およびデキサメタゾンの添加は石灰化物産生を促進した。また、活性型ビタミンD添加により破骨細胞分化誘導因子(RANKL)の発現が上昇し、破骨細胞分化が誘導された。さらに、神経堤由来細胞はSca1やPDGFRなどの間葉系幹細胞マーカーを発現し、スフェアと呼ばれる幹細胞に特徴的な細胞塊を形成した。よって毛包の神経堤由来細胞は幹細胞の性質である高い増殖能と骨芽細胞への分化能をもつことから、骨再生用の細胞ソースとして有望である。すなわち、本プロジェクトにおいて初年度にケラチノサイトの一部が神経堤由来であることを発見し、次年度以降に毛包の神経堤幹細胞を同定し、その多分化能を利用して骨芽細胞に分化誘導することに成功したことから、ほぼ計画どおりの成果を達成できたと言える。
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Cytotechnology
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