研究概要 |
本研究課題は,次に記載する実験Iと実験IIに分けて行った。 実験Iは,口腔顔面痛をもつモデルとして下歯槽神経切断による神経因性疼痛モデルラット(Iwata et al., Int Rev Neurobiol, 2011)の作製と同ラットにおける神経活動の記録である。さらに,本モデル動物における痛覚閾値の評価を行った結果,2週間以上にわたりvon Frey刺激毛による刺激で逃避閾値,すなわち痛みによって顔を背ける行動を起こす閾値が低下することを確認した。また,痛覚閾値の低下が最も顕著な期間が,施術後2週付近にあることと,施術後4週付近では行動生理学的にはほとんど回復していることが明らかになった。そこで覚醒下での計測を実現するため,レバー押し課題を作成し,課題遂行中に大脳皮質への電極挿入や神経活動の記録を行った。 実験IIは,ラットを用いたPET撮像法の確立である。PET撮像には,覚醒状態における脳賦活領野の同定が可能であるFDG法を用い,小動物に特化したPETカメラを使用し,SPMによる統計解析を行うことにより,測定精度の向上を図った結果,侵害的な口腔内刺激によって賦活化される脳領域を検出することが出来た。またこの手法による活性化領域が確かに神経活動に依存していることを確認するため,c-fosの免疫組織化学実験を行った。その結果,PETで観察された島皮質を初めとする脳領野は,c-fos陽性細胞を多く含有することが明らかとなった。現在,下歯槽神経切断モデル動物をもちいてFDG-PET法によるプラシーボ鎮痛効果の責任領野の同定を試みている。
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