研究課題/領域番号 |
24659832
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岩田 幸一 日本大学, 歯学部, 教授 (60160115)
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研究分担者 |
小林 真之 日本大学, 歯学部, 准教授 (00300830)
中西 博 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20155774)
篠田 雅路 日本大学, 歯学部, 准教授 (20362238)
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キーワード | 三叉神経 / 神経障害性疼痛 / 舌神経 / グリア細胞 / ATP / P2Y12 / 三叉神経節 |
研究概要 |
一昨年度に確立された方法に従って、三叉神経第2枝をゆるく結紮してION-CCIラットモデルを作製した。昨年度も同モデルラットの口ひげ部への機械アロデイニアが発症することを確認し、延髄における活性型ミクログリアとニューロンの活性状態を明らかにするためにリン酸化ERK(pERK)発現について解析を行った。活性型ミクログリアはIba1陽性を示した細胞として、免疫組織学的に判定した。その結果、活性型ミクログリアは三叉神経脊髄路核尾側亜核(Vc)から上部頸髄(C1-C2)の広い領域に発現を認めた。また、その発現は三叉神経第2枝だけでなく第1枝および3枝を含む広い領域に広がっていた。また、その発現はION-CCI後数日から発現し、3日目にピークを示した。電気生理学的解析を行った結果、Vcから検出された侵害受容ニューロン活動が有意に抑制された。さらに、ミクログリアの活性化阻害薬であるミノサイクリンを全身投与することによって、ミクログリアの活性化が抑制され、同時にpERK陽性細胞の発現数も有意に減少した。これらの結果から、ION-CCIによってVcの侵害受容ニューロンに引き起こされた異常な興奮性増加はミクログリアの有意な活性化を誘導し、それが引き金となってVc細胞に存在するERKのリン酸化が進み、Vc細胞のさらなる活動性の亢進が進む可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画した三叉神経脊髄路核尾側亜核および上部頸髄における活性化ミクログリアならびに反応性アストロサイトによる神経シナプス伝達に対する物理的ならびに化学的影響を順調に解析できているため。
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今後の研究の推進方策 |
ION-CCIモデルラットを用いた研究結果から、Vcに発現した活性型ミクログリアが口腔顔面領域に発症する神経障害性疼痛に対して重要な働きをなすことが明らかになった。そこで今年度は、臨床的に大きな問題となっている口腔癌にフォーカスを当て、舌の癌性疼痛モデルラットを作製してVc侵害受容細胞活動に対するミクロの役割について解析を行う。癌が発症すると組織への浸潤が起こり、発症部位に分布する神経が障害を受け強い痛みが生じる。しかし、申請者らのパイロット実験では癌を播種して数日間は、浸潤が起こっているにもかかわらず痛みが発症しない。おそらく、浸潤によって引き起こされる神経障害性疼痛を抑制する仕組みが存在するものと考えられる。そこで、本年度は舌癌モデルラットを作製し、これまでに注目してきたVc領域に注目し、疼痛の発症時期に従って癌性疼痛が発症していない時期と強く発症している時期の2つのステージに分け、Vc領域に発現する活性型ミクログリア分布について詳細に検討を加える。さらに、神経細胞の活性化マーカーであるpERKの発現状態についても検討を加える。また、これらの神経細胞がミクログリアの活性化を抑制することによって変調されるかどうかについても電気生理学的手法を用いて解析する。さらに、これら痛みを発症しない時期に、抹消においてどのようなメカニズムが存在するかについても、神経節および末梢神経レベルで解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
マイクログリア活性化の解析が少し遅れているため、免疫染色用の各種抗体を購入していないため。さらに、マイクログリア活性化阻害による行動薬理学的実験もあわせて行わなければならない。 26年度の助成金と合わせて、マイクログリア活性化の解析のため、免疫染色用の各種抗体および試薬を購入し、研究を進める。さらに、マイクログリア活性化阻害による行動薬理学的実験のための各種試薬も購入しなければならない。
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