研究課題/領域番号 |
24659833
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
高橋 直之 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 教授 (90119222)
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研究分担者 |
川原 一郎 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (20319114)
中道 裕子 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (20350829)
上原 俊介 松本歯科大学, 歯学部, 助教 (90434480)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 骨芽細胞 / 破骨細胞 / エピタキシー因子 |
研究概要 |
CNTを「骨リモデリングを制御する生理活性物質」として評価し、新価値を提唱することを目的に、破骨細胞と骨芽細胞の分化をCNTが同のように調節するかを解析した。 (1)破骨細胞を用いて、CNTに結合する転写因子を解析した。CNTはNFATc1の核内移行を阻害することを明らかにし、破骨細胞形成を抑制する新しい機序を提示した。一方、転写因子NF-kB の核内移行は抑制しなかった。その機序を解析したところ、 CNTは特異的にNFATc1を吸着する可能性が示された。この機序がCNTによる破骨細胞形成抑制作用の本体であることを証明した。(2) 破骨細胞の核抽出駅を調製しCNTに結合する新規の転写因子を解析したが、新規の転写因子を同定するに至っていない。(3) CNTはエピタキシー因子をトラップするという仮説に基づき、骨芽細胞分化におけるCNTの作用を解析した。骨芽細胞の培養系にCNTを添加すると、骨芽細胞による石灰化結節の形成が著しく亢進した。また、CNTは骨芽細胞の分化を誘導する転写因子Runx2の発現を強く誘導することが示された。(4) CNTがエピタキシー因子を蓄積するかを解析し、CNT自体がエピタキシー作用(Caイオン沈着)を有していることを明らかにした。一方カーボンブラックにはCaイオン沈着促進作用は認められなかった。(5)骨誘導因子BMPとともにCNTをコラーゲンスポンジにいれてマウス皮下に移植した。CNTはBMPが誘導する骨形成を著しく促進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)破骨細胞分化を抑制するCNTの作用機構が明らかにできた。NFATc1以外の転写因子に対して吸着効果が無いために、破骨細胞分化を特異的に抑制する機序は解明できたと考える。(2)骨芽細胞分化を促進する機序も解明できた。CNTがCaイオンを吸着し、そのCaイオンが骨芽細胞の分化を促進することを証明できた。以上の2点は、CNTを実用化する上で重要な知見を提供したと考える。80%は達成できたと自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
(1)マクロファージの核抽出液を用いて、CNTに結合する新規転写因子をクローニングする。新規の転写因子は破骨細胞分化を制御すると想定される。 (2)CNTがCaイオンの吸着以外に、エピタキシー因子を吸着する可能性も否定できない。そこで、さらに骨芽細胞の培養系より、CNT結合性のエピタキシー因子を解析する。また、CNT をプローブとして、骨芽細胞のcDNA 発現ライブラリーからエピタキシー因子をクローニングする。(3)破骨細胞は極性化指標としてTRAP-Marks を骨表面に残すことを 明らかにした。TRAP-Marks に対するCNT の作用をin vivo で解析する。TRAP-Marks を誘導するためには、NFATc1 の活性化が必須と考えられる。このTRAP-Mark を解析することで、NFATc1 による破骨細胞機能を調節する作用をCNT がどのように制御するか明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
CNTに結合する新規転写因子をクローニングするためマウス、細胞培養試薬、遺伝子工学試薬を購入する。骨芽細胞と破骨細胞の培養那ために、培養器具、培養試薬を購入する。NFATc1とTRAP-markの関連をさらに解析するために、マウス、細胞培養試薬、遺伝子工学試薬を購入する(消耗品70万円)。国内学会で成果を発表するため、旅費として30万円を計上する。成果論文の投稿と別刷り代に30万円使用する。
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