研究課題
申請計画に従い,計画初年度はワクチンのアジュバント活性を向上させる可能性のあるDNA配列を外界に露出させたDNAオリガミ体を復習種類構築することを目指した.はじめに,一本鎖DNAであるM13mp18を購入し,内在する1カ所のヘアピンループ(20 nt)を含む73 ntの領域をBsrBIで消化し,この操作で得られた7,176 ntのDNAを鋳型鎖にすることで,鋳型DNAの内部構造に左右されないDNAオリガミをパーソナルコンピュータおよび専用ソフトウエアを用いてデザインした.続いて,二本鎖DNAを理論上平面構造を保持させるために,16もしくは32塩基のオリゴヌクレオチドを鋳型と相補的にデザインした.約7,000 ntの鋳型DNAに対し,約200本の短鎖オリゴヌクレオチドの「留め金鎖」を決定することが出来た.次に,鋳型M13mp18 DNAと留め金DNAの混合比を検討し(質量比で1:1~1:1,000),両者を混合し,95℃に加熱後,20℃まで2時間~24時間かけて緩やかに冷却し(この課程を実施するために専用のサーマルサイクラーを購入した),得られた反応DNA 鎖を原子間力顕微鏡で観察した.そして,至適の混合比と冷却時間を決定した.現在までに,上記の工程を5回以上繰り返し,最終的にアジュバント活性誘導配列を外界に露出させたDNAオリガミ体を3形態構築し,細胞実験やマウス動物実験モデルに供するための大量合成に取り組んでいる.
2: おおむね順調に進展している
研究計画で提唱した仮説を裏付けるような,M13DNAを鋳型とし,36-merのDNAオリゴ体200種類で7000ntのDNAを任意に折り畳むことができた.さらに,アジュバント効果を有すると推定する平面デザイン通のDNAオリガミ体を三種類構築できたことから,おおむね当初の計画通りに進展していると考える.
(1)前年度に選出したDNAオリガミ体を市販の23価肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)と混合する.各種の混合比で調整した「ワクチン=DNAオリガミ液」を準備し,マウス後脚に接種する.隔週ごとに採血を行い,肺炎球菌に対する抗体価の上昇をELISA法で測定する(寺尾・中田).(2)抗体価の上昇を確認した後,マウスから脾臓細胞を摘出し,標的細胞株p815に対する細胞傷害性T細胞活性を測定する(川端・住友).(3)抗肺炎球菌の抗体価が上昇した血清を肺胞上皮細胞株の培養上清に添加し,肺炎球菌の上皮細胞侵入に対する阻害能を検索する(川端・住友).また,同抗血清を用いて,23価の肺炎球菌に対する抗体価の上昇パターンをWestern blot法で解析する(寺尾・中田).(4)免疫増強を確認できるDNAオリガミが決定できれば,致死量の肺炎球菌をマウス口腔から感染させる.そして,経日的にマウスの生存数を記録し,感染防御効果を算出する.死亡したマウス、および30日以上生存したマウスから,肺・脾臓・腎臓・肝臓・心臓を摘出し,滅菌した磨砕装置で各組織をPBSと混和する.混和液を血液寒天培地へ接種し,翌日に生育した菌数を算定する.そして,各臓器へ伝播した肺炎球菌の数を組織重量比で算出する(寺尾・中田).(5)最後に,懸念される副反応である抗DNA抗体の産生量を測定する.手順(1)で採取したマウス血液と抗DNA抗体価測定用のELISAキットで定量する(川端・住友).得られた結果は,研究代表者自身が学会および学術誌で専門家を対象に報告する.そして,申請者が作成する研究室のホームページから,リアルタイムで広く国民に発信する(http://web.dent.osaka-u.ac.jp/~mcrbio/)(寺尾).
動物実験を実施予定であるため,実験動物費を申請する(ディスポーザブル飼育ケージ代も含む).実験機器は購入せず,動物実験で得られた試料を解析するための試薬およびプラスチック器具を購入する計画である.また,最終的な実験成果を発表するために,国内および国際学会への参加旅費を計上する.そして,全研究成果を英文の学術雑誌へ投稿するために,英語論文の英文校正費と校正者との通信連絡費,および印刷費を計上する.
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (8件) 図書 (1件) 備考 (4件)
J. Biol. Chem.
巻: 288 ページ: 15854-15864
巻: 288 ページ: 13317-13324
PLoS one
巻: in press ページ: in press
Pediatirics International
Cell. Microbiology
Microb. Infect.
巻: 15 ページ: 212-218
巻: 287 ページ: 22266-22275
巻: 287 ページ: 10472-10481
Int. J. Oral Science
巻: 4 ページ: 14-18
J. Bacteriol.
巻: 194 ページ: 804-812
J. Med. Microbiol.
巻: 61 ページ: 101-108
http://www.dent.niigata-u.ac.jp/microbio/microbio.html
http://www.niigata-univ-mid.net/study/index2.html
http://www.niigata-univ-mid.net/about_us/index.html
http://www.niigata-univ-mid.net/contact/index.html