研究課題/領域番号 |
24659839
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
新垣 理恵子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (00193061)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 / シェーグレン症候群 / 自己免疫マーカー / 確定診断 / 予後診断 |
研究概要 |
生体の恒常性維持には外界からの異物・病原体の侵入を排除する免疫システムが必須であるが、この防御機構の破綻が自己免疫疾患を誘発する。現代の難病と言われる自己免疫疾患患者は年々増加し、世界中で多くの患者のQOL が低下しているにも関わらず、その診断法は限定的であり、病因論に基づいた診断技術の開発には至っていない。申請者らはシェーグレン症候群実験モデルの開発から始まり、シェーグレン症候群病態発症機構の解明めざして研究を進めてきた。本研究での最終目的は多くの実験的知見から得られたシェーグレン症候群発症の引き金となる重要分子 を用いて、新たな診断法を開発することである。 これまでに申請者らの研究により明らかにされた分子を中心に病態との関連性を詳細に検討して「自己免疫マーカー」となりうる分子を探索する目的で、自己免疫疾患モデルマウス(NFS/sld, MRL/lpr, NOD, aly/aly マウス)のT細胞動態を解析した。末梢血中、脾臓、涙腺・唾液腺浸潤T細胞からナイーブT細胞、およびメモリーT細胞を分離精製すると、自己免疫疾患モデルマウスにおいてはメモリーT細胞が局所において疾患に応じて増大していた。これらのメモリーT細胞の遺伝子発現をマイクロアレイ法により解析した結果、疾患マウスのメモリーT細胞特異的にCCR6、CXCR7増加および減少を認め、詳細な解析を実施し、末梢血T細胞での「自己免疫マーカー」と成り得るかを確認中である。標的臓器側からのアプローチとしては、自己免疫疾患モデルマウスにおいて病態の発症前後、進展に伴って涙腺、唾液腺組織で動きを示す分子について主に、アポトーシス関連分子について検討を行なっている。今後、抗体やプロテアーゼ蛍光基質を用いたインビボイメージング応用の可能性も追求していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自己免疫疾患においては様々な臓器(関節、膵臓、唾液腺など)がこの病気の標的となっているが、なぜその臓器が攻撃を受けるのかは明らかになっていない。私達は唾液腺・涙腺を標的臓器とするシェーグレン症候群を中心に、特定の臓器に発症する自己免疫疾患の謎を追求してきた。自己免疫疾患発症には様々な原因が報告されているが、病気が起こり始めてから症状として現れるまでの詳しい仕組みは不明のままであり、この研究は、自己免疫疾患の発症する仕組みを目で確認できる技術を確立して、治療のタイミングや効果を判定し、適切に治療する方法の開発を目的としている。 各種自己免疫疾患モデルを用いて、病態のどの段階で候補因子がどのように作用し、病勢や予後にどのように影響を与えているのかを精査するために、メモリーT細胞の動態を調べた結果、病態と相関するケモカイン受容体を見出すことができた。このケモカイン受容体および対応するケモカインの詳細な発現パターンを解析中である。また点眼による薬剤やshort interference (si)RNA投与により涙腺および副涙腺へ薬剤等が浸透し治療効果を期待できることを確認することができた。点眼、涙腺等は非常に扱いやすい方法・臓器であり、「自己免疫マーカー」による局所の病態可視化に利用できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
自己免疫疾患の発症機序において、臓器と免疫システムとのネットワークの中で重要な分子群を様々な病期にどのように対応していくかを検討した上で、病態の程度や臨床症状、予後などを予想することが目的としている。シェーグレン症候群疾患モデルマウスを用い、発症前後、病態進展に伴う複数の標的臓器決定因子の変化をインビボイメージング 解析でトレースすることにより、最終的な疾患の病態が把握できる。前年度に見出したケモカインに対するsiRNAを点眼・全身投与することにより、そのケモカインの減少と病態進行との相互関係を涙腺・唾液腺へ浸潤してくる蛍光蛋白発現T細胞をモニターすることで、確認することが可能であると考えている。前述したように、涙腺・唾液腺はインビボイメージングに最適であり、さらに標的臓器側の「自己免疫マーカー」の確率と標識方法を検討し、臓器と免疫システムの両方から自己免疫疾患発症メカニズムを可視的に捉えていきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の予算と合算して、研究計画どおり、マウス購入や試薬購入に使用する。引き続き「自己免疫マーカー」の探索と解析を実施しながら、インビボでの解析に移行できるようにしたいと考えている。
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