研究課題
β1-3グルカンおよびその受容体であるdectin-1が、自然免疫に及ぼす影響について、マクロファージを対象に解析を行った。マウス単球・マクロファージ系細胞株であるRAW264.7細胞の単層培養系に対して、β1-3グルカンの1つであるcurdlanを添加した上で、歯周病原性細菌であるAggregatibacter actinomycetemcomitansを感染させた。A actinomycetecomitansの感染によりRAW264.7細胞の細胞増殖抑制が観察されたが、dectin-1強発現株において、感染により誘導される細胞増殖抑制に耐性が認められた。さらにcurdlanの全処理により、細胞増殖抑制に対する耐性が増強された。細胞周期の解析結果からもdectin-1の恒常的な強発現により、A actinomycetemcomitans感染マクロファージにおいて誘導されるアポトーシスの抑制がsub G1期を占める細胞の割合の減少として観察された。またメカニズム解析のため、A actinomycetemcomitans感染マクロファージに対して行ったWestern blottong解析の結果では、インフラマソーム構成成分であるNALP3およびCryopyrinの発現が認められ、マクロファージにおける歯周病原性細菌感染時の応答にインフラマソームが関与することが推測された。さらに、dectin-1強発現マクロファージでは、A actinomycetemcomitans感染によるNAIPの発現が著明であった。インフラマソーム関連タンパクのうち、NAIPはアポトーシス抑制タンパクとも報告されていることから、歯周病原性細菌A actinomycetemcomitansは誘導するアポトーシスに対し、NAIPがアポトーシスシグナル経路に対して何らかの関与をしていることが考えられた。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に示す通り、初年度(平成24年度)は、ドラッグデリバリーシステムに応用するための詳細な条件設定に際し、より生体親和性の高いドラッグデリバリーシステムの構築のために、マクロファージのphenotypeに与える影響について分子生物学的に検討することを目的とした。「研究実績の概要」に示すように、歯周病原性細菌感染に対するdectin-1とcurdlanを介したシグナリングが、アポトーシスに対し抵抗性を示すこと、そしてこの抵抗性のメカニズムとして、インフラマソームの関与を明らかにした。こういった観点から研究の達成度はおおむね順調に進展していると考えられる。ただし、インフラマソームを介したシグナル経路制御系については、分子生物学的手法を用いた、より詳細な検討の追加が必要であると考えている。
平成25年度はβ1-3であるシゾフィラン(SPG)に関する検討を中心とする。平成24年度に得られた知見をベースに、A actinomycetemcomitans感染マクロファージにおけるSPGの生物学的活性をcurdlanと同様の手法を用いて解析する。また、SPGを強塩基性水溶液に溶解させ3重らせんを解離してランダムコイル上の単一鎖とした後、3重らせん構造再生過程で1本鎖の核酸を添加することで、1本の鎖が核酸によって置き換わった複合体を作製する。作製したSPG-核酸複合体を上記のマクロファージ感染系に用い、phenotypeに対する影響を分子生物学的手法で明らかにし、ドラッグデリバリーシステムへの応用に関する有用性を考察していく。
該当なし
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