研究課題
挑戦的萌芽研究
SPARCは,マトリセルラープロテインと知られる43kDaの糖タンパク質である.私達はC57Bl/6系SPARCノックアウトマウスを用いて高転移性メラノーマB16BL6細胞の肺への転移結節数がワイルドタイプマウスのそれと比べて低下していることを見出し,さらに,B16BL6細胞自身のSPARCの発現をノックダウンしても転移が抑制されることを見出している.一方,SPARCのノックアウトマウスの表現系は,マウスの系統差が大きい.そこで,C57Bl/6系のほか,MF1系とバッククロスによりMF1からC3H系のノックアウトマウスを作製し,SPARCのノックアウトによりマウス3系統に共通して発現が変化しているものをマイクロアレイ法により検討したところ,Cathelicidin Antimicrobial Peptide の1つであるCAMP,neutrophilic granule protein (NGP),Serum Amyloid A3 (SAA3)の遺伝子発現がSPARCノックアウトマウスの肺で発現が上昇していた.本研究では,マイクロアレイの結果をreal-time PCRにより確認し,さらに,B16BL6細胞にSPARCのsiRNAを作用させて,遺伝子発現の影響を調べた.その結果,SPARCノックアウトマウス肺でワイルドタイプよりも最も発現上昇していたのは,neutrophilic granule protein (NGP)であり,この結果は,B16BL6細胞にSPARCのsiRNAを作用させた場合も同様であった.最近, NGPが癌転移を抑制するとの報告がなされた.従って,SPARCノックアウトマウスでの肺転移抑制には,NGP発現の上昇が考えられ,SPARCはNGPの発現調節因子として機能していることが示唆された.
3: やや遅れている
各ターゲット遺伝子のプロモーターをクローニングし,ルシフェラーゼコンストラクトを構築しているが,プロモーターとしての必須領域を絞り込むことに,時間を費やしているため.
SAPRCノックダウンの効果により遺伝子発現上昇が最も大きかった遺伝子はneutrophilic granule protein (NGP)であったことから,25年度は,この遺伝子について重点的に解析する.まず,SPARCとNGPに対するshRNAを構築し,両者のダブルノックダウン細胞を作成し,転移性への影響について検討する.一方,NGPのプロモーターコンストラクト構築については引き続き,行うものとし,さらにSPARC siRNAの効果がNGP mRNAの半減期に影響するかなどを調べる.
ノックアウトマウスの維持に,40万円程度必要である.また,培養用の消耗品に30万円,ベクター代,抗体などに30万円を予定している.
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 図書 (3件)
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