研究課題/領域番号 |
24659846
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今里 聡 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80243244)
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研究分担者 |
松本 卓也 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40324793)
佐々木 淳一 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50530490)
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キーワード | 歯学 / 組織工学 / 再生歯学 / 歯髄 / 細胞集合体 |
研究概要 |
In vitroにおける歯髄様組織構築に向け、本年度は、温度応答性高分子(pNIPAAm)ゲルを応用したラット歯髄細胞の棒状細胞集合体作製技術についての検討を行った。具体的には、歯髄の形状に近似した形態の凹みを有するpNIPAAmゲルに、ラットから採取した歯髄の初代培養細胞を播種することによる棒状細胞集合体の作製を試みた。 まず、通常の培地で培養した歯髄細胞をpNIPAAmゲルに播種し、培養1日から2日後に細胞集合体の取り出しを試みたところ、いずれの培養日数においても、集合体が容易に分離し、成形体として取り出すことはできなかった。次に、歯髄細胞をあらかじめ細胞外基質産生を促進させる分化誘導培地で一定期間培養した後に集合体作製に用いた結果、棒状の歯髄細胞集合体を取り出すことに成功した。つづいて、この棒状の歯髄細胞集合体を振盪機培養すると、培養1日後には棒状の形態が失われてしまうが、静置培養を行うと、長期にわたって棒状の形態を維持できることが分かった。 本年度において得られた歯髄細胞棒状集合体の作製および培養技術は、in vitroにおいて歯髄様組織を構築するうえで鍵となる重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、三次元細胞集合体作製技術を応用したin vitroにおける歯髄様組織構築を目的としており、本年度は、ラット由来歯髄細胞を用いた棒状細胞集合体の作製方法の確立を目的としていた。研究実績の概要に記載した通り、あらかじめ歯髄細胞を象牙芽細胞分化誘導し、細胞外基質の沈着を促進させることで、棒状細胞集合体を作製することに成功した。また、棒状細胞集合体の長期培養を可能にする手法を考案した。 以上のことから、現在までおおむね順調に研究が進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度に確立した歯髄細胞から成る棒状細胞集合体を用いて、in vitroでの象牙質・歯髄複合体の作製を試みる。具体的には、歯髄細胞棒状集合体を象牙芽細胞分化誘導した後に、薄切切片を作製してDMP-1およびDSPの免疫蛍光染色を行い、象牙芽細胞マーカータンパク質の集合体内における局在を検討する。また、集合体を長期培養した後に、内部に沈着した象牙質様石灰化基質の局在の検討をvon Kossa染色を用いて行い、さらにフーリエ変換赤外分光分析あるいは微小X線回折解析により定性評価を行う。歯髄細胞棒状集合体の象牙質・歯髄複合体への分化誘導効率が悪い場合は、培養培地へFGF-2などの増殖因子を添加することで分化効率の促進を図る。これらの検討に基づき、最適な培養条件を特定することで、in vitroにおける象牙質・歯髄複合体の構築が可能となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
棒状集合体の作製法および培養法の確立に時間を要したため、今年度に予定していた、歯髄細胞棒状集合体の免疫蛍光染色法による分化マーカーの発現に関する検討が実施できなかったため。 次年度は、作製した歯髄細胞棒状集合体の構造解析を主に行う予定であり、組織切片作製のための器材を購入する。さらに、免疫組織学的検討、石灰化基質定量評価に使用する試薬やキットの購入が必要となる。これら研究遂行に係る消耗品は、研究申請書に記載されている研究計画に則り必要性を吟味して効率的に使用する。次年度においては、多くの研究成果が得られることが予想されるため、研究打ち合わせ、および成果発表に係る費用は平成25年度と比較して多く使用することを計画している。
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