研究概要 |
機能評価の結果より口腔機能が改善しているにもかかわらず,患者の不満感が解消されない場合もある.従来の機能評価法に加え,心理的な影響をとらえる事を目的とした検査方法の確立が望まれている. 本研究の目的は,唾液中のストレス感受性蛋白を計測し, 従来客観的機能評価ではとらえきれなかった患者の心理面について非侵襲的に評価できるシステムを構築することとし, 今回は特に,顔面口腔領域腫瘍の外科的摘出後に装着する顎義歯という特殊な義歯を研究対象として,その装着前後における患者の心理的変化,慢性ストレスの変化について非侵襲的な評価方法を構築することを目的とした. 被験者は頭頸部癌の外科的切除を経験した患者のうち, 下顎顎義歯安定期及び下顎顎義歯調整期の顎義歯装着者とした. この2群において, 起床直後(T0)および起床後30分(T30)の1日2回を連続した2日間(計4回)の唾液採取とアンケート調査を行い, 唾液中コルチゾール値について, T0, T30および2点の差について比較検討を行った. その結果, 安定期の下顎顎義歯装着群ではT0からT30の間のコルチゾール値の上昇が認められたが, 調整期の下顎顎義歯装着群では認められず, T0とT30の差において, 調整期の下顎顎義歯装着群は, 有意に低い値を示した. 本研究結果を論文投稿し,Journal of Prosthodontic Researchにアクセプトされた.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では,顎顎義歯装着患者について顎義歯調整期から安定期にかけて経時的なデータを採取し, 個人における唾液中コルチゾール値の変化を調べることで, 顎義歯装着期間による影響が明確になり, 臨床現場へのフィードバックが可能となると考えられる. また, 鼻汁が影響すると考えられる上顎顎義歯装着患者については, 従来の機能評価法等を用いて顎義歯の適合性を検討し,唾液採取を行うことが望ましいと考えられる.
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