慢性痛は組織損傷の通常の治癒期間を過ぎても持続する生物学的意義のない痛みとされており,局所の傷害の程度や画像所見からでは説明が困難な痛みを特徴とする.本研究では,このような慢性痛を有する顎関節症患者に対し,温熱刺激を用いた疼痛閾値を複数回測定すること,ならびに異なる温熱刺激強度と認知する痛みの強さの関連性を検討することにより,疼痛認知の歪みを評価した. 口腔顔面部に慢性痛を有する顎関節症患者においては,下顎神経支配領域のみではなく前腕部においても,温熱刺激の強度を痛みの感覚として正確に認知することが困難な状態にあり,中枢における痛みの認知過程に歪みが生じている可能性が示唆された.
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