口の健康に関連する歯の数や咀嚼機能、歯の形態について遺伝または環境の影響をどの程度受けているかを調べた。歯列形態は遺伝の影響、歯の数や歯周病は環境の影響を強く受ける一方、咬合力や咀嚼能率,唾液分泌などの機能は遺伝にも環境にも影響を受けていることがわかった。このことは歯科医、患者共に治療の限界を知り、予防する上で重要であると考えられる。 近年、口の健康と動脈硬化の関連が指摘されているが、遺伝の影響を考慮した研究はみられない。遺伝因子を考慮し、これらの関係を調べたところ、歯数と動脈硬化のとの関係には遺伝因子が関与していること、また遺伝因子を取り除いた上でも両者の関連性が認められた。これより、歯の数は動脈硬化に影響を与える環境要因として重要であることが示唆された。 人間のあらゆる行動や意思決定、ある疾病への罹患には少なからず遺伝が関与していると考えられている。さらに、遺伝統計学の分野においては、その遺伝の寄与は年齢とともに増す傾向にあることが知られている。 今回我々の集めた一卵性の双子サンプルにおいては、高齢になるほど双子間で口腔の状態が大きく異なるペアの占める割合が多くなることがわかった。これより口腔の状態に対しては高齢になるほど環境因子がより強く影響を与えることが示唆された。口腔の健康を維持するためには大きく影響を与えている環境因子を取り除き、予防に力を注ぐ必要がある。
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