研究課題/領域番号 |
24659861
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石川 邦夫 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (90202952)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | リン酸三カルシウム / セメント / 多孔体 / 連通気孔 / リン酸水素カルシウム / 生体吸収性 |
研究概要 |
本研究の目的は①骨欠損部で硬化性を示すこと、②硬化体の組成の全てが、骨に置換される組成であること、③硬化体の構造が、骨への迅速な置換のために細胞が硬化体内部にまで侵入できる完全連通多孔構造を示すこと、の全てを満足するリン酸三カルシウムフォームセメント創製の可能性を検討することである。本年度は初年度にあたり、セメントの粉末部にあたる顆粒と硬化液の調製を検討した。 骨に置換される組成とするため、コアの組成は型リン酸三カルシウム(TCP)とした。フォーム形態のTCPを得るためにポリウレタンフォームを用いるが、高温焼成しないと機械的強さに問題がある。しかし、高温焼成すると組成が高温安定相であるTCPとなった。鋭意検討した結果、MgOを添加すると相が安定化され1500℃で焼成してもTCPフォームが調製できることがわかった。なお、フォーム調製に時間がかかるため、本挑戦的萌芽研究においては顆粒を用いることが適切であると判断した。そこで、焼成体を粉砕し、1000ミクロンのふるいを通過し、600ミクロンのふるいに残留したものを粒部とすることとした。 硬化液は第一リン酸水素カルシウムをリン酸水溶液に溶解して調製した。第一リン酸水素カルシウムの濃度を増大するにつれ、リン酸濃度を増大させる必要があることがわかった。リン酸濃度が0.1モル濃度の場合には第一リン酸水素カルシウム濃度が0.3モル濃度、リン酸濃度が1モル濃度の場合は第一リン酸水素カルシウム濃度が1モル濃度が適当であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は初年度であり、リン酸三カルシウムフォームセメントの顆粒部および硬化液を調製することを目的とした。骨に置換される組成とするため、コア部の組成は型リン酸三カルシウム(βTCP)としたが、βTCPは低温安定相でありαβ転移点が1180℃であることから1180℃以下で焼成する必要があるが、フォーム調製においては圧粉操作ができないため、1180℃以下では十分な強さのβTCPフォームが調製できなかった。そこでMgOの添加によるβ相の安定化を検討した。1500℃で焼成する場合、1モル%のMgOの添加ではαTCP、2モル%のMgOの添加ではαTCPとβTCPの混合相、3モル%以上のMgOの添加ではβTCPの単一相が得られることがわかった。なお、本研究はリン酸三カルシウムフォームセメントの創製が可能か否かを検討する挑戦的萌芽研究であることからフォーム調製に時間を取られるべきではないと判断し、βTCP顆粒を用いて検討を続けることとした。 一方、硬化液はリン酸水溶液を基盤に調製した。硬化性の観点からリン酸水溶液に第一リン酸水素カルシウム(MCPM)を溶解させることがわかった。MCPMの濃度を増大するにつれ、リン酸濃度を増大させる必要があることがわかった。リン酸濃度が0.1モル濃度の場合にはMCPM濃度が0.3モル濃度、リン酸濃度が1モル濃度の場合はMCPM濃度が1モル濃度が適当であることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は研究計画の2年目にあたり、①リン酸三カルシウムフォームセメントの硬化挙動の検討および②リン酸三カルシウムフォームセメント硬化体の材料学的検討を行う。昨年度の硬化液の調製にあたり、予備的検討でリン酸三カルシウム顆粒は第一リン酸水素カルシウムを溶解させたリン酸水溶液で硬化することがわかっているため、硬化挙動粉末X線回折装置等で解析する。リン酸三カルシウムフォーム顆粒とリン酸カルシウム硬化液を混合し、37℃、相対湿度100%のインキュベーター内に保管する。経時的にインキュベーターから取り出し、乾燥させることによって反応を停止させる。電子顕微鏡観察、粉末X線回折などで反応相を定性分析した後、析出相を定量分析する。 また、リン酸三カルシウムフォーム顆粒とリン酸カルシウム硬化液の反応で形成された硬化体の機械的強さは万能試験機による圧縮強さ測定で定量化する。連通性および気孔径はマイクロCT分析にて評価を行う。平成24年度に効率的な研究費の執行により本年度に繰り越せた研究資金は硬化反応をより詳細に検討する研究に充当する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に効率的な研究費の執行により本年度に繰り越せた研究資金は硬化反応をより詳細に検討する研究に充当する。
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