本研究の目的は①骨欠損部で硬化性を示すこと、②硬化体の組成の全てが、骨に置換される組成であること、③硬化体の構造が、骨への迅速な置換のために細胞が硬化体内部にまで侵入できる完全連通多孔構造を示すこと、の全てを満足するリン酸三カルシウムフォームセメント創製の可能性を検討することである。本年度は硬化体の組成および構造の検討、動物実験による有用性の検討を行った。 硬化反応は溶解析出型反応であるため、顆粒部の反応性を制御する必要がある。αリン酸三カルシウムよりβリン酸三カルシウムが好ましいため、顆粒部としてはMgOを添加することにより安定化させたβ型リン酸三カルシウム顆粒とした。練和液として第一リン酸水素カルシウム-リン酸溶液を用いた。顆粒部を練和液で練和すると硬化すること、硬化体は表層部がコア部を被覆している構造であり、コア部の組成はβ型リン酸三カルシウム、表層部の組成はリン酸水素カルシウムであることを確認した。 硬化体が示す組織親和性を検討するためにラットに作成した骨欠損部をリン酸三カルシウムフォームセメントで再建した。リン酸三カルシウムフォームセメントは骨欠損部でも硬化性を示した。また、埋入1週間目までに著明な炎症反応は認められなかった。埋入4週目の段階で骨伝導が認められた。また、過剰な酸性リン酸カルシウムは骨形成を阻害することもわかった。本研究で得られた結果を基盤として、より骨伝導性に優れるリン酸三カルシウムフォームセメントの創製が望まれる。
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