研究課題
現在、組織工学に基づき、幹細胞を用いた組織再生が試みられている。最近、移植された幹細胞自体が分化し標的組織を形成するのではなく、幹細胞が産生するパラクライン因子が創傷治癒を促すと考えられるようになってきている。しかしながらそのメカニズムは明らかでない。近年、細胞外小胞(ECV)は、血液などの体液や幹細胞の培養上清中にも存在が確認され、細胞間でタンパク質、mRNA、microRNA(miRNA)など多様な分子を同時に運搬するキャリアとしてその生物学的重要性が示唆されている。本研究は、ECV を介した幹細胞による創傷治癒促進のメカニズムを研究し、細胞移植を伴わない安全、低侵襲、低コスト、簡便な歯周組織再生法の確立を目指すことを目的として研究を行った。平成24年度には、間葉系幹細胞の培養上清から超遠心法を用いてECVを回収、確認を行った。ラット歯周組織欠損モデルにおいて幹細胞培養上清が治癒を促進すること、この効果が培養上清よりECV を除くとほぼ失われることを確認した。平成25年度には、幹細胞ECVによる創傷治癒促進効果のメカニズムを検討した。具体的には、1.ECVの幹細胞内での局在とECVの標的細胞への取込みをタイムラプスにて確認した。2.線維芽細胞における遺伝子発現と細胞の分化能の変化を確認した。3.血管内皮細胞に対する増殖、遊走、チューブ形成の促進を確認した。しかしながら、当初計画していたECVが内包するmiRNAの解析が進んでおらず今後の研究が必要である。以上の結果より、幹細胞より放出されたECVは、標的細胞に取り込まれることで細胞の分化や機能に影響を与えることが明らかになった。現在、幹細胞移植による再生医療が注目を集めているが、一方で移植した幹細胞の腫瘍化の危険が問題になっている。本研究成果は、幹細胞移植を伴わない安全な再生治療の開発に寄与すると考えている。
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