研究課題/領域番号 |
24659873
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
吉田 靖弘 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (90281162)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | ドラッグデリバリーシステム / 濃度変化 / 多糖誘導体 / イオン結合 / 疎水性相互作用 |
研究概要 |
低濃度でのみ機能するドラッグデリバリーシステム(DDS)があれば,抗がん剤など副作用の強い薬剤も効果的に使用でき,未来医療のブレークスルーとなることは間違いない。しかし現在まで,薬物濃度を検知するDDS に関しては全く報告がない。本研究では,申請者が開発した多糖誘導体が薬物の濃度変化に伴いイオン結合から疎水性相互作用へと会合状態を変えることに着目し,会合体の構造変化により濃度を検知して機能する濃度センサー付インテリジェントDDS を創製することを目的とした。まず初年度である平成24年度は,多糖誘導体リン酸化プルランと塩化セチルピリジニウム(CPC)の複合体を実用化につなげることを目指し,当初の目標であった(1)会合状態の分子レベル解析,(2)抗がん剤への展開,(3)抗がん剤への展開に加え,(4)競合となるキャリアの探索を新たに行うこととし,特に(4)を重点的に行った。その結果,食品添加物として用いられている2種類のリン酸化多糖,同じく食品添加物であるリン酸化オリゴ糖,リン酸化プルランの原料であるプルラン,グルコース‐6‐リン酸など候補となり得る様々な材料とCPCとの複合体について評価した結果,いずれもリン酸化プルラン‐CPC複合体ほど低濃度のCPCで抗菌効果を発現することはなかった。さらに候補となり得る材料を探索すべく,アパタイトに対して強固に接着することが報告されている10-methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate (MDP)ならびに類似構造を有するDecyl dihydrogen phosphate (DDP)をCPCのキャリアとして用いたところ,MDPではCPC0.3%で,またDDPでは0.2%で優れた抗菌効果を発現することが明らかとなったが,いずれもキャリアとしての機能はリン酸化プルランには及ばなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目標であった(1)会合状態の分子レベル解析,(2)抗がん剤への展開,(3)抗がん剤への展開に加え,多糖誘導体リン酸化プルランと塩化セチルピリジニウム(CPC)の複合体を実用化につなげることを目指し,(4)競合となるキャリアの探索を新たに行った。特に(4)の結果,食品添加物として用いられている2種類のリン酸化多糖,同じく食品添加物であるリン酸化オリゴ糖,リン酸化プルランの原料であるプルラン,グルコース‐6‐リン酸,さらに,アパタイトに対して強固に接着することが報告されているMDPならびに類似構造を有するDDPをCPCのキャリアとして用いたが,いずれもキャリアとしての機能はリン酸化プルランには及ばなかった。これはリン酸化プルラン-CPC製剤を実用化につなげる上で不可欠な成果である。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の目標である(1)会合状態の分子レベル解析,(2)抗がん剤への展開,(3)抗がん剤への展開に加え,多糖誘導体リン酸化プルランと塩化セチルピリジニウム(CPC)の複合体を実用化につなげるために必要な基礎的知見を集積する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
予定よりも安く物品購入できたため残額が生じた。平成25年度は最終年度となるため,上記の目標を遂行する上で必要不可欠な実験の経費と,成果発表・資料収集・打ち合わせなどの旅費に充てる。
|