研究課題/領域番号 |
24659883
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 千晴 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50222013)
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研究分担者 |
進藤 正信 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20162802)
東野 史裕 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50301891)
北村 哲也 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00451451)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 口腔がん / pp32 / pp32r1 / 発現ベクター / 軟寒天コロニー形成法 / 足場非依存性増殖能 |
研究概要 |
我々は最近、ARE-mRNAの安定化が細胞をがん化することを証明し、口腔がんなど多くのがんでもHuRが核外輸送され、ARE-mRNAも核外輸送・安定化されていることを見出した。さらに口腔がん細胞のHuRをノックダウンすると足場非依存性増殖能や浸潤活性も低下することを見出し、これらの成果に基づき申請者らは、ARE-mRNAの核外輸送システムの破綻による、新たな発がん機構を提唱している。本研究では、ARE-mRNAを核外輸送するタンパクHuRに結合するpp32が、細胞質のHuRの発現を低下させることを利用して、口腔がんのがん形質を消失させ、口腔がん治療のための基礎検討を行うことを目的とする。本年度は口腔がん細胞のpp32およびそのファミリーのpp32r1の発現ベクターを作成し、その発現を検討し、さらにpp32、pp32r1の口腔がんにおける役割を解析した。 1.pp32ファミリーの発現ベクターの作成 pp32およびpp32r1遺伝子をOri-gene者から購入し、それぞれの遺伝子をPCR法で増幅し、pcDNA3プラスミドに挿入し、それぞれの発現ベクターを作成した。また作成した発現ベクターをHSC-3などの口腔がん細胞に導入し、実際に各タンパクが発現されるかウエスタン法で確認した。 2.pp32、pp32r1の口腔がんにおける役割 pp32およびpp32r1ががん細胞の形質に影響するか検討するため、口腔がん細胞であるSAS細胞に各発現ベクターを導入し、それぞれの細胞を軟寒天中で培養しそれらの変化を検討した。その結果、pp32を発現した細胞は、空ベクターを導入したコントロール細胞に比べて軟寒天中でのコロニーが顕著に小さくなり、逆にpp32r1を発現した細胞は軟寒天中でもよく生育し、pp32とpp32r1はがん細胞の持つ足場非依存性増殖能に関して相反する機能を持つことが証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔がん細胞におけるARE-mRNAの核外輸送・安定化を介した形質を理解するため、初年度はARE-mRNAに直接結合してその輸送に関わるHuRタンパクと結合するpp32とそのファミリーpp32r1について口腔がん細胞を用いて解析した。これまでいくつかの解析によりpp32はがんの抑制に関わり、逆にpp32r1は細胞がん化に関わることが明らかになっている。今回の実験では新たに軟寒天コロニー形成法を用いて、pp32を発現した細胞は足場非依存性増殖能が低下し、pp32r1を発現させた細胞は足場非依存性増殖能が上昇することが証明でき、pp32ファミリーの発がんに関する活性を別の角度から証明したことになり貢献度が大きいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年度作成したpp32ファミリーの発現ベクターを応用して、各遺伝子のウイルス発現ベクターを作成する。作成したウイルスベクターを用いて、培養細胞やヌードマウスなどの動物を用いた解析によりpp32ファミリーの機能をさらに詳細に解析し、口腔がん治療のための基礎検討を行う。さらに、HuRの分解制御についても解析を加えたい。pp32はHuRと複合体を形成し、核外に輸送され、細胞質でcaspaseによりHuRが分解されが、pp32r1がこのHuR分解に対してどのような効果を持つかは不明である。そこでpp32r1が強制発現された細胞を形成し、HuRとともにpp32r1が細胞質に輸送されるか蛍光免疫染色法で確認し、HuRが分解されるかをウエスタン法で検討する。HuR分解に対するpp32r1の役割が明らかになれば、次は口腔がん細胞でpp32r1がHuRの分解に対して同様の効果を持つか検討し、がん細胞の細胞質でHuR発現が高い原因を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は計画でも示したとおり、動物を使った実験をする必要があるので、何人かの大学院生に仕事を分担してもらう予定があり、それらの大学院生に謝金を提供する予定である。実験の状況によっては、分担してもらう大学院生を増やすことも考えており、謝金が増える可能性がある。 その他の研究費の使用計画に大きな変更は無いと考えている。
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