研究概要 |
原発巣切除断端陰性と診断されるも再発や転移に至る症例が存在する。現行の腫瘍マーカーでは早期の再発を予測できないため、近年、循環血液中癌由来遊離核酸(CNAs)の検出により微小転移を予測し予後診断に役立てる試みがある。しかし、CNAsは量に乏しく検出効率に限界がある。そのため、本研究では細胞内に核酸DNAの数百倍のコピー数があるミトコンドリアDNA(mtDNA)をターゲットとし、検出感度および特異性に優る高解像度融解曲線分析法(HRMA)を用いて検討し、簡便で正確な予後診断法の開発を目的とした。 先行研究では、口腔癌患者の末梢循環血液中癌由来DNA(circulating tumor-related DNA: ctrDNA)を術前後で調べ、術前で52%にその存在を確認し、術後4週経過してもctrDNAが検出された4症例は全て予後不良であった。本研究では口腔癌患者の臨床サンプル(原発巣組織、術前および術後定期採取末梢血)を採取し、抽出・精製したDNAを元にmtDNAの変異を検出した。口腔癌細胞株5種類(HSC2, HSC4, Ca9-22, Sa3, H1)とヒト正常口腔粘膜上皮細胞(HNOKs)に関して、ヒトミトコンドリア全ループ領域の塩基配列解析を行い比較したところ、Dループ領域塩基c.68C>T、12S-rRNA領域塩基c.1107A>G、16S-rRNA塩基c.3190T>C、 ND2領域塩基c.5108T>C、ND3領域塩基c.10398A>Gの全ての領域に塩基置換による変異を認めた。この5領域について、臨床検体によるqPCR-HRMA法を用いretrospective studyを行ったところ口腔癌の予後判定に有用であった。また5領域の中で、16S-rRNA領域が検査として最も有用であると考えられた。
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