研究課題/領域番号 |
24659888
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
鵜澤 成一 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 講師 (30345285)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | リンパ節 / 口腔 / 癌 / ゲノム / SNPs / 転移 |
研究概要 |
口腔扁平上皮癌の発癌と進展過程においては、遺伝子のコピー数変異(CNV)が高頻度に認められる。われわれは、口底部扁平上皮癌同時性頸部リンパ節転移症例の原発、頸部転移リンパ節(IA、IB、III領域由来)のホルマリン固定されたパラフィン包埋標本よりDNAを抽出・精製した。この修復したDNAをIllumina Human OmniExpress_FFPE-12を用いて全ゲノムを対象にジェノタイピングアッセイし、ゲノム上約69万か所のSNPs部位のCNVを評価した。これにより得られた結果をもとに、原発巣・頸部3領域(IA、IB, III)の転移リンパ節標本全4検体のCNV分布、一致率を統計学的に検討した。その結果、各検体のCNVで最も多かったのは通常の2コピーであったが、原発巣とIII領域には3コピーも多く認められた(原発巣:38%、III:20%)。一方IA、IB領域では3コピーはわずかに認められるのみ(ともに1%未満)であり、頸部リンパ節転移3検体でもCNVパターンに大きな差を認めた。また、原発巣とIAのCNVの一致率は約61%で、原発巣とIB、原発巣とIIIの一致率はそれぞれ63.9%、65.2%だった。4検体の相違率をデンドログラムにして評価したところ、IAとIBは非常に相違率が低く、同一のクローンであることが強く示唆されたが、これらと原発巣の間には35~40%程度の相違があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予算の関係上、口腔癌の原発巣と転移巣3か所の解析しかできなかったが、今までには報告されれていない、原発巣からの癌細胞の転移経路は一つではなく、同時に複数の経路をたどって(原発巣→IA/IB)、(原発巣→III)転移が起きている可能性があり、古典的な意味でのセンチネルリンパ節理論と異なることや、また各転移リンパ節での相違率の高さは、異なるクローンの転移または転移巣で癌細胞がそれぞれ異なる変異をしていることなどの新たな知見が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
同じ原発巣から生じ、臨床的に同時性と評価された転移リンパ節内の癌細胞であっても、その染色体上の領域のコピー数変異の内容は大きく異なることが分かった。これにより、原発巣からの癌細胞の転移経路は一つではなく、同時に複数の経路をたどって(原発巣→IA/IB)、(原発巣→III)転移が起きている可能性が示唆され、古典的な意味でのセンチネルリンパ節理論と異なる知見がえられた。また各転移リンパ節での相違率の高さは、異なるクローンの転移または転移巣で癌細胞がそれぞれ異なる変異をしている可能性を示唆しており、引き続き症例を増やしてその意味と機能の解析をすすめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度と同様な方法により、口腔癌原発巣と転移巣における全ゲノムを対象にジェノタイピングアッセイし、ゲノム上約69万か所のSNPs部位のCNVを解析する。本年度は、原発巣と1つのリンパ節転移巣を中心に解析し、原発巣と転移巣でCNVがどの程度異なっているのか明らかにする。さらに、複数個転移の生じた症例を解析し、リンパ節転移経路の解明を試みる予定である。
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