研究課題/領域番号 |
24659896
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
東 雅之 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (20144983)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 口腔扁平苔癬 |
研究概要 |
当該研究の目的は、不死化口腔粘膜上皮細胞株を用いて、1) 基底細胞直下へのリンパ球浸潤機構の解明、2) 粘膜上皮病変の発症機構の解明、3) それに基づく治療戦略の構築、である。 1)臓器・細胞においてsex hormone balanceの異常はリンパ球浸潤を誘導する。そこでリンパ球浸潤機構として、基底細胞においてandrogen低下が起こる結estrogen/androgen imbalanceが惹起され、リンパ球浸潤が開始されるとの作業仮説のもと、(1)TNF-αやIL-1αにて上皮細胞(RT7細胞)を処理したところ、androgen変換酵素5-α-reductaseの発現低下が認められたが、estrogen変換酵素aromataseの発現様式に変化はみられなかった。(2)RT7細胞をandrogenの前駆分子であるdehydroepiandrosterone (DHEA)にて処理することによりandrogenの発現増強が確認された。2)TNF-αはRT7細胞からのMMP-9産生を促進させることにより基底膜を分解させ、細胞をアノイキスに誘導する。そこで(1)in vitroにおいてRT7細胞をTNF-αにて処理することによりMMP-9産生の増強が認められた。(2) TNF-αシグナル伝達経路をアルカロイド製剤であるセファランチンにて遮断することにより、RT7細胞からのMMP-9産生が阻止された。3)サイトカインは上皮細胞の正常な分化を阻止する。そこで(1)RT7細胞をTNF-αにて処理した時の増殖・分化に及ぼす影響を解析したところ、増殖には影響がみられなかったが、分化のマーカーであるインボルクリンの発現低下が確認された。(2)抗TNF製剤にてRT7細胞を処理したところ、インボルクリンの発現回復が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究目的は「病変初期段階であるリンパ球浸潤の阻止、病変中期段階である基底細胞の融解変性の阻止、および病変後期段階である上皮細胞の角化異常の阻止」をin vitroにおいて明らかにすることである。 1. 病変初期段階におけるリンパ球浸潤の阻止に関しては、RT7細胞をTNF-aにて処理することにより、androgen変換酵素であるa-reductaseの発現減少を明らかにした。 2. 病変中期段階である基底細胞の融解変性に関しては、RT7細胞をTNF-aにて処理することにより、MMP-9産生の増強を示したことから、基底膜の破壊によるRT7細胞のアポトーシス誘導が確認された。 3. 病変後期段階である上皮細胞の角化異常に関しては、RT7細胞をTNF-aにて処理することにより、分化のマーカーであるインボルクリン発現低下を示したことから、上皮細胞の角化異常を明らかにしたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのin vitroでの研究成果より、TNF-aなどのサイトカインは口腔扁平苔癬の発症原因因子として非常に重要な役割を担っていることが明らかになったことから、今後は、その阻止療法につき解析を進める。すなわち、1)androgenの前駆分子であるdehydroepiandrosterone (DHEA)にてRT7細胞を処理することによるandrogenの発現増強につき解析する、2)TNF-aシグナリング阻止による、RT7細胞からのTNF-a誘導MMP-9産生の抑制を明らかにする、3)RT7細胞におけるTNF-aによるインボルクリン発現抑制の抗TNF製剤による回復を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度への繰越額は消耗品費に使用予定である。 (次年度使用額 128143分F-6-1)
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