研究実績の概要 |
最終年度に実施した研究結果として、1) 口腔扁平苔蘚患者と健常者の血清中DHEA発現量には明らかな相違はみられなかったが、唾液中DHEA量に関しては口腔扁平苔蘚患者において有意な低下が認められた。2) 唾液中に存在するサイトカイン量については、口腔扁平苔蘚患者において健常者と比較して有意に増加していた。3) 免疫組織化学的検索より、口腔扁平苔蘚患者においては健常者に比較して、aromataseの発現は同等であったが、5-a-reductaseに関しては発現低下が認められた。4) 口腔扁平苔蘚患者と健常者の口腔粘膜上皮組織におけるTNF-aシグナル伝達分子群の発現につき、免疫組織化学的に解析したところ、口腔扁平苔蘚患者組織においては、NF-kB, MMP-9の発現増強とIV型コラーゲンの消失が観察された。このことは、基底細胞のアノイキスに基底膜破壊が関与していることを示唆する所見と考える。以上の研究結果は、前年までのin vitroでの研究成果と合致するものである。すなわち、a) 不死化正常口腔粘膜細胞であるRT7細胞をTNF-aあるいはIL-1bにて処理したところ、5-a-reductaseの発現低下に繋がることが明らかとなった。b) TNF-a刺激RT7細胞にDHEAを添加することにより、androgen/estrogen imbalanceを改善することが可能であった。c) RT7細胞をTNF-aにて処理することにより、転写因子NF-kBの活性化を介してMMP-9の産生増強が認められ、NF-kB活性を抑制するセファランチン処理により、MMP-9産生の抑制を誘導することが可能であった。d) RT7細胞をTNF-aにて処理することにより、細胞分化のマーカーであるインボルクリンの発現低下が認められ、抗TNF-a抗体処理により、細胞分化抑制の解除が確認された。
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