舌痛症は、器質的な変化が認められないにもかかわらず、舌に慢性的な痛み、しびれ、灼熱感などが生じる病気であるが、その原因については十分に解明されていない。一方、microRNA (miRNA) は癌など様々な疾患の発症に関与していること、また血清などの体液中に安定した状態で存在することが報告されている。そこで、本研究では舌痛症の発症に唾液中の miRNA が関与していると考え、舌痛症患者の唾液中において特異的に存在量が変動する miRNA を探索した。抗真菌薬、ビタミン剤、抗うつ薬、漢方薬など薬物療法に抵抗性を示し、かつサクソンテストにより唾液分泌量の低下を認めない舌痛症患者 (6 名) と同年代同性の健常者 (4 名) の唾液 0.2 ml より miRNeasy Mini Kit (Qiagen) を用いて miRNA を抽出し、マイクロアレイ (Affymetrix) による網羅的発現解析を行った。網羅的発現解析の結果、健常者と比較して舌痛症患者の唾液では、6 種類の miRNA の存在量が著明に上昇していた。前年度の次世代シーケンサーによる網羅的発現解析では舌痛症患者と健常者間に明らかに存在量が変動する唾液 miRNA が同定できなかったことから、miRNA の検出感度はマイクロアレイが優っていると考えられた。以上の結果より、舌痛症患者の唾液中の miRNA は有用なバイオマーカーかつ治療標的となる可能性が示唆された。
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