研究課題/領域番号 |
24659899
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
杉浦 剛 九州大学, 大学病院, 講師 (40322292)
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研究分担者 |
碇 竜也 九州大学, 大学病院, 助教 (70380467)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 唾液腺 / 再生医療 |
研究概要 |
我々はこれまでに、胎生期組織から細胞を分離し、in vitro で再構成させるモデルを開発し、組織学的に観察した。胎齢 13.5 日の胎仔マウスより顎下腺を摘出し、単一に分離した細胞を高濃度で I 型コラーゲンゲルやマトリゲル中に滴下しフィルター上で培養したところ、細胞塊より分枝形成、続いて管腔形成が観察できた。組織中の小葉では PAS 染色にて粘液の産生が確認され、免疫組織化学ではアクアポリン 5 の局在を認めたことにより、構造物は正常組織の Terminal Bud Stage 相当まで分化可能であることが示された。単一化細胞を腎被膜下に移植しても細胞塊は組織構築を示した。 この培養系では、胎生期の顎下腺細胞はその構造を再構築する機能を持ち、胎生期の唾液腺分化過程をある程度再現できることが示され、この方法は組織再生の過程を考察するのに有効な手段の一つであると考えられた。近年、組織構築における上皮間葉移行の重要性が明らかにされ、その制御遺伝子・蛋白であるBrachyuryの関与が報告されている。そこで胎生期唾液腺の正常分化におけるその発現を検討した。胎齢 13.5 日の唾液腺原器ではBrachyuryの高発現が認められたが次第に発現が減弱した。このことから唾液腺組織構築における上皮間葉移行の関与とBrachyuryによる制御の可能性が示唆された。 さらにこの培養システムを発展させて成獣マウス唾液腺から唾液腺幹細胞を含むスフェロイド(Salivary Tissue-Originated Spheroid:STOS)を作成し、ここから唾液腺を再生する試みをおこなった。浮遊培養で得られる細胞塊は胎生期組織に比べ形態形成が明らかでないものの分枝形成らしき状態が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
STOSを用いた培養系を確立し、これを組織分化までin vitro で誘導するのが本年度の目的であったが、STOSの形成は成獣では非常に困難で、わずかにしか形成されないことから実験そのものに時間が必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
あくまでも成獣からのSTOSの形成が必要である(再生医療での細胞の供給源として)ことからSTOS形成に最適な条件を模索する必要がある。 その後、in vivoでの最適分化誘導を起こさせるため皮下、腎被膜下、唾液腺被膜下などに移植してその分化を観察する。 STOS由来組織かもともとの組織由来かを鑑別するためにはSTOSの形成はGFPマウスを用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の実施状況より使用する培養液、増殖因子については費用がかかると考えられる。実験動物についてもGFPマウスなど特殊な実験動物が必要であり、動物実験に対する費用が必要である。分化誘導する際にはさらに抗体の使用もしくは遺伝子導入を行う可能性もあり、主に物品費に対する出費が中心となる。学外の研究者にもアドバイスや情報共有をする必要性があり、適宜旅費を計上する。
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