研究課題/領域番号 |
24659900
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
藤井 智美 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教務職員 (90305152)
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研究分担者 |
岸田 昭世 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50274064)
仙波 伊知郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60145505)
中村 典史 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60217875)
小松澤 均 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90253088)
岐部 俊郎 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 医員 (50635480)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / インドネシア |
研究概要 |
エナメル上皮腫は歯原性良性腫瘍でありながら高度な骨浸潤能のため、顎顔面の変形や機能障害を引き起こす。本研究では培養細胞(エナメル上皮腫細胞単独、及び病変周囲に存在する細胞とのco-culture)の実験系を用いて、本疾患において特徴的な骨浸潤に関わる分子を特定するとともに、組織型の違いによる増殖や骨浸潤の違いについても解析する。その結果を、臨床材料、病理所見と併せて総合的に検討し、本疾患の骨への浸潤能を直接反映するリスク因子の同定を行う。最終的にはエナメル上皮腫治療での、根拠ある客観的な骨浸潤リスクの迅速判定法の構築を目指すことを目標とする。 研究内容は既存のエナメル上皮腫由来細胞であるAM-1細胞株と新たに我々が樹立したエナメル上皮腫由来細胞のAM3及び正常口腔粘膜上皮由来細胞であるMOE1を用いて、骨浸潤・破壊に関連する可能性のあるMMP(マトリクスメタロプロテアーゼ)-2、-9、MMPを標的遺伝子とするWntシグナル関連遺伝子及び破骨細胞への作用について解析を実施した。また、エナメル上皮腫細胞に破骨細胞誘導能をもつことは、すでにAM1細胞で確認しているので、AM3細胞及びMOE1細胞での破骨細胞誘導能について検討を行った。 その結果、エナメル上皮腫AM1及びAM3細胞株では、正常口腔粘膜上皮MOE1細胞株を比較して、Wnt-5a、Frizzled-2、MMP-2、-9の高発現が認められた。特にMMP-9の発現は口腔がん細胞と比較しても発現が亢進していることがわかった。さらに、AM3細胞株では、Wnt-3aタンパクで刺激するとMMP-9の遺伝子発現が亢進し、それに加えてMMP-9の酵素活性の上昇も認められた。また、AM3細胞とラットのマクロファージ由来細胞であるRAW細胞とを共培養した結果、AM3細胞によって破骨細胞の誘導が起こることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、我々が樹立させたエナメル上皮腫細胞株(AM3)と正常口腔粘膜上皮細胞株(MOE1)を用いた、Wntシグナル経路と骨浸潤に関する研究成果をまとめ、その成果は科学雑誌に掲載された。さらにエナメル上皮腫と正常口腔粘膜上皮細胞株とを比較したマイクロアレイを実施したのでこれらの結果を解析し、まとめた成果を科学雑誌に投稿する計画である。 これまでの結果から、Wntたんぱく質を含めた未同定の液性因子やエナメル上皮腫細胞内のWntシグナル異常などが原因となり、MMP等が産生されてコラーゲンの分解することや、エナメル上皮腫細胞株に破骨細胞や破歯細胞を分化誘導を認ることが骨破壊や骨浸潤を引き起こす原因となっている可能性が考えられる.さらには、マイクロアレイでLPS受容体の発現の亢進が認められたことから、エナメル上皮腫病変部に感染が起こると、病変の増悪が起こることが予想される。つまり、感染がリスク因子となっている可能性があると思われる。 以上のことから、エナメル上皮腫における骨浸潤の分子生物学的メカニズムについての解析は順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、エナメル上皮腫細胞株の分泌タンパク質やエナメル上皮腫症例の病理切片のタンパク質の解析はタンパクの回収までは行ったものの、解析までは実施できなかった。今後は、タンパクの解析を実施していく予定である。また、昨年度はマイクロアレイを行いWnt関連以外のシグナル分子や受容体などの遺伝子発現が亢進または抑制されているものがないかを網羅的に解析したので、今後はマイクロアレイの解析データをまとめ論文投稿予定である。さらに、エナメル上皮腫における破骨細胞や破歯細胞を分化誘導の抑制因子または促進因子について検討するために、共培養実験系を用いてWntタンパク質やサイトカイン、LPS等を用いた条件下での破骨細胞誘導能の解析を実施する予定である。そのうえで、エナメル上皮腫の骨浸潤を増悪させるリスク因子の確定へとつなげていく計画である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費で備品を購入する計画はない。研究費は主として細胞培養のための培地を含めた試薬、カラムクロマトグラフィー実験、マイクロアレイの解析などの消耗品の購入に費やされる。また、本研究成果を国内外の学会に発表し他研究者と情報交換するための交通費等として使用する。その他、論文の校正、掲載料に当てる予定である。
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