研究課題/領域番号 |
24659902
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
桐田 忠昭 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (70201465)
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研究分担者 |
梶原 淳久 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (00382317)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | DNA修復 / 口腔がん / 5-FU |
研究概要 |
本研究では、口腔がんの治療効果向上を目指し、日常臨床で用いられている抗がん剤に関してDNA修復経路が増感作用をもたらす分子標的候補となるか否かを明らかにすることを目的としている。本年度は、フッ化ピリミジン系の代謝拮抗剤であり、長年にわたり顎顔面口腔領域のがんをはじめ、様々な固形がんの治療に使用されている5-FUに関して、DNA修復経路における殺細胞効果を高める標的候補を検討した。 細胞は、Chinese hamster 由来のBRCA2 deficient細胞、XRCC2 deficient細胞、Ku80 deficient細胞およびDNA-PKcs deficient細胞とそれぞれの親株細胞を用いた。生存率の測定は、各種濃度の5-FUを培地中に添加して24時間、37℃処理し、コロニー形成法にて生存率を算出した。DNA二本鎖切断量の測定は、フローサイトメトリーによって、5-FUによる24時間添加処理後のγH2AX量を経時的に測定し、DNA二本鎖切断量を比較検討した。ヒト細胞での増感効果の検討については、ヒト口腔扁平上皮癌細胞へ標的になると考えられたBRCA2 siRNAを導入し、5-FUの増感効果を検討した。 結果は、BRCA2 deficient細胞は、その親株細胞と比較し5-FUにより約2.5倍の高い殺細胞効果を認めた。また、BRCA2 deficient細胞では、その親株細胞に比べて、5-FU処理によって生じるDNA二本鎖切断の修復遅延も確認された。また、ヒト口腔扁平上皮癌細胞へのBRCA2 siRNA導入により、5-FUの増感効果が認められた。 以上より、DNA修復経路におけるBRCA2は、5‐FU増感の標的になると考えられ、その阻害により5-FUによるより効果的ながん治療が期待されるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
顎顔面口腔領域のがん治療で用いられている5-FUに関して、DNA修復経路が増感作用をもたらす分子標的候補になり得ることを明らかにし、研究の目的とするところを達成している。 各種DNA修復酵素欠損Chinese hamster 由来の細胞を用いて、分子標的候補を絞り込むだけでなく、ヒト口腔がん細胞に分子標的候補と考えられるsiRNAを導入し、5-FUの増感作用を確認しており、常に臨床を意識した研究を行うようにしている。
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今後の研究の推進方策 |
5-FUのみならずカルボプラチン・タキソテールなどの抗がん剤に関して、DNA修復機構における抗がん剤の増感標的候補を明らかにし、臨床検体を用いてそれらの遺伝子発現と、臨床効果を比較検討することで増感剤の開発や治療効果予測指標として臨床に応用出来るのではないかと考えられる。 ヌードマウス移植系での抗がん剤増感の比較検討や、臨床検体を用いて、各種抗がん剤の臨床効果と各抗がん剤の増感標的候補の遺伝子発現との相関性について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
各種細胞の培養のために、培地や血清などの購入が必要であり、研究費の使用を考えている。 また、各種抗がん剤で増感候補として考えられたDNA修復酵素欠損のチャイニーズハムスター由来細胞またはその親株細胞を、ヌードマウスに移植し抗がん剤投与により移植腫瘍の増殖に変化を認めるか否かの検討をする計画をしており、ヌードマウスの購入や飼育にも研究費の使用を検討している。 研究成果を論文や学会発表などを通じて、広く社会へ還元していくことも重要であると考え、それらに関しても研究費の使用を予定している。
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