研究課題
本研究は、化学療法による口腔顎顔面領域のがん治療増感を目的に、DNA修復経路が抗がん剤の増感効果をもたらす分子標的となり得るか否かについて検討を行ってきた。昨年度から特に5-FUに関して、様々なDNA修復酵素欠損細胞を用いて殺細胞効果を高める候補をDNA修復経路の中から検討し、5-FUによってもたらされるDNA二本鎖切断の修復には、HR(相同組み換え修復機構)がNHEJ(非相同末端結合修復機構)よりも重要な役割を果たしていることを解明した。またHRの中でも、特にBRCA2が重要と考えられた。今年度の研究は、γH2AXを指標とした免疫組織学染色およびフローサイトメトリ―法により、BRCA2の欠損したchinese hamsterの細胞は、その親株細胞に比べて、5-FUによってもたらされたDNA二本鎖切断の修復に遅延が生じている事が確認された。さらに、PI染色を行いフローサイトメトリ―法にて細胞周期を観察したところ、BRCA2欠損細胞では、G2/M期での細胞周期の停止を認め、このことからも5-FUによって生じたDNA二本鎖切断修復には、G2/M期で細胞周期依存的に働くHRが重要な役割を担っていると考えられた。また、BRCA2、Ku80などのsiRNAをヒト口腔扁平上皮癌細胞へ導入し5-FUの増感を検討したところ、BRCA2siRNAが導入された細胞では高い増感効果を認めた。さらに、HR修復においてBRCA2と協力的に作用するCHK1の阻害剤を作用させた細胞も高い増感効果を認めた。こように様々な手法を用いて多角的に検討を行った結果、5-FUによってもたらされるDNA二本鎖切断の修復には、HRが重要な役割を担っており、その中でもBRCA2は非常に高い増感効果をもたらす分子標的になると考えられた。尚、以上の内容に関して、我々のグループは論文執筆を行い既に国際誌に掲載されている。
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