研究課題/領域番号 |
24659905
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
里村 一人 鶴見大学, 歯学部, 教授 (80243715)
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研究分担者 |
井出 信次 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (00611998)
徳山 麗子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (20380090)
佐藤 徹 鶴見大学, 歯学部, 講師 (30170765)
寺田 知加 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (40460216)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 口腔白板症 / CaSR / 悪性化確率 |
研究概要 |
口腔白板症は口腔粘膜疾患の中でも発症頻度が比較的高く、その経過中に7~11%の頻度で悪性化することから、口腔粘膜疾患の中でもとくに留意するべき角化性病変である。また実際の臨床においては、平滑型、溝型、潰瘍型、結節型、斑点型などさまざまな視診型を呈することが知られているが、今日までその病態や癌化の原因などについては十分に解明されておらず、外科的切除以外に有効な治療法が確立されていないのが現状である。細胞外カルシウム感知受容体(calcium-sensing receptor:CaSR)は、1078 個のアミノ酸からなり、その配列は7個のエクソン(3234 bp)によりコードされている。この翻訳領域の中には、現在までに判明しているだけで210 カ所の変異や遺伝子多型が確認されており、さらにその変異のうちのいくつかは機能獲得型変異や機能喪失型変異であり、実際の細胞機能などに異常を来すことが知られているが、この受容体が皮膚のkeratinocyteや食道の粘膜上皮細胞にも発現していることが確認され、上皮細胞の分化を制御していることが明らかとなっている。本研究では、CaSR 遺伝子における変異の蓄積が角化異常症としての口腔白板症の病因・病態に深く関わっている可能性に着目した。そこで、今年度は、口腔白板症症例5例および非白板症症例5例の生検もしくは切除組織を用いて、これをDispaseを用いて上皮組織と間葉組織に分けた後、DNAを抽出し、CaSR遺伝子のシークエンスを解析した。その結果、CaSRの特定の部位に遺伝子変異を認めるが、白板症症例に必ず認められる変異箇所は認められなかった。今後は症例数を増やすとともに、正常症例でも組織像が異なる場合に変異箇所があるのか否か、また、口腔癌での変異の有無についても検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、今年度は、口腔白板症症例と非白板症症例を数例集めて、その切除標本や生検標本を用いてCaSR遺伝子の変異の有無を解析する予定であったが、概ね順調に解析を進められており、現時点では本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに得られている口腔白板症症例のCaSRの変異箇所の解析および非白板症(正常粘膜)のCaSRの変異箇所の解析を症例数を増やして行うとともに、口腔白板症の長期安定症例と経過観察中に悪性化がみられた口腔白板症症例の生検もしくは切除組織より、前述と同様の方法でDNA を抽出し、CaSR 遺伝子の増幅を行う。また癌抑制遺伝子であるRb およびp53 の遺伝子をそれぞれのエクソンごとに増幅する。これらの遺伝子における変異を解析し、長期安定症例と悪性化症例における遺伝子異常の変化および蓄積状態につき検討するとともに、口腔白板症の悪性化メカニズムを明らかにすることを目指す。また、口腔白板症等の角化異常を伴わず発症した口腔癌におけるCaSR 遺伝子および癌抑制遺伝子であるRb とp53 における変異を検索する。この結果を、口腔白板症から発生した口腔癌における遺伝子異常と比較することにより、角化異常を伴わない、いわゆるde novo carcinomaの発生メカニズムに関する知見を得ることを試みる。さらに、Field cancerization が関与していると考えられる異時性多発癌に対して、複数回の手術療法が施行された症例において、すべての生検組織および切除組織の切片からCaSR 遺伝子および癌抑制遺伝子のDNA を抽出し、同様の方法でそれぞれの遺伝子を増幅し、それらにおける変異の有無、部位および程度(サイレント変異、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、機能獲得型変異、機能喪失型変異などのうち、どれにあたるのか)を解析する。これにより、field cancerization の病態の解明に向けた基礎的データの収集を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は研究計画に基づき、細胞培養用試薬、分子細胞生物学的検討試薬類、生化学的検討試薬類、組織学的検討試薬類、実験用動物、等に物品費を使用し、成果発表のために旅費を使用するとともに、人件費、謝金、論文印刷費などを計上している。前年度からの繰越金が発生しているのは、今年度、遺伝子解析において、症例数がより多く集まらなかったためであり、次年度はさらに症例数を増やすとともに、口腔白板症症例、非白板症症例に加えて、口腔白板症長期安定症例、悪性化した口腔白板症症例、白板症が先行していない口腔癌症例、異時性多発癌症例におけるCaSRの解析を行い、さらに癌抑制遺伝子の変異状態についても検討する予定であり、これらの解析のために、本来今年度使用予定であったこれらの繰越金を有効に使用して、これらの検討をすすめ、先行している結果とともに、本研究を順調に進展させていく予定である。
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