研究課題/領域番号 |
24659907
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山本 照子 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (00127250)
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研究分担者 |
池田 悦子 東北大学, 歯学研究科(研究院), 大学院非常勤講師 (20509012)
竹下 信郎 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50431515)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ヒト・エピソーマルiPS細胞 / 再生医学 |
研究概要 |
種々の原因による歯の欠損が認められる患者に対して矯正歯科治療を行う場合、最終的に歯の欠如部を人工材料によって補う必要のある症例が少なくない。しかし近年、組織から採取した細胞を用いて人工歯胚を再生させる研究が進み、歯の欠損部へ再生歯を移植するという歯の再生医療実現への期待が高まってきている。本研究では、将来の臨床応用を目標として、ヒト歯根膜、歯髄細胞からヒト・エピソーマルiPS細胞を樹立し、これに歯胚上皮・間葉に特異的な遺伝子を導入することにより、歯胚形成細胞へと分化誘導して細胞シーズを 確保し、これを用いてヒト人工歯の作製を実現化することを目的とする。 我々は、矯正歯科治療のために抜去された歯の歯髄を採取し 、細胞を増殖させた。 Okita, Yamanakaら(Nat Methods, 2011)の方法に従い、エピソーマルプラスミドをヒト歯髄細胞に遺伝子導入して、ヒト・エピソーマルiPS細胞を樹立した。 樹立したヒト・エピソーマルiPS細胞がES細胞と類似した遺伝子発現パターンを有することを確認するために、ES細胞のマーカー遺伝子として知られるOct3/4、Sox2、Fgf4、Nanogなどの発現 をRT-PCRにより解析したところ、いずれの遺伝子も発現が認められた。また、ES細胞特異的抗原として知られる、SSEA-4タンパク質の発現を、免疫蛍光染色により解析したところ、その発現が認められた。これらの結果から、我々が樹立した歯髄細胞由来のヒト・エピソーマルiPS細胞はES細胞に類似した多分化能を有していると考えられる。 今年度の研究は、再生歯作製のための細胞シーズが獲得できた点で意義がある。今後、樹立したヒト・エピソーマルiPS細胞を用いて、人工歯作製技術の確立を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の計画である、ヒト・エピソーマルiPS細胞の樹立とその多分化能の評価を達成し、今後の再生歯胚作製に用いる細胞シーズが獲得できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後、樹立したヒト・エピソーマルiPS細胞を用いて、人工歯作製技術の確立を目指す。 天然の歯胚の発生において、上皮細胞と間葉細胞による上皮間葉相互作用が重要である。そこで今後の研究では、口腔組織の記憶を維持したヒト・エピソーマルiPS細胞から上皮および間葉細胞の誘導を目標とする。そのために、遺伝子導入、サイトカインの添加などの種々の条件を検討し、効率の良い上皮および間葉細胞の誘導方法の確立する。得られた上皮および間葉細胞をコラーゲンゲル内で再構成させ、3次元的に培養することによりヒト人工歯胚を作製する。その後人工歯胚を器官培養、あるいは免疫不全動物への腎皮膜下あるいは顎骨移植し、再生歯の発生を促す。発生した再生歯をパラフィン包埋した後、組織切片を作製し、組織学的に解析する。また、再生歯の萌出まで観察した後、再生歯を3D-CT撮影し、既に申請者が所有する画像解析ソフトウェアを用いて3D-CT画像を3次元構築し、定量的形態計測を行う。 再生歯作製技術の開発に至るまでの過程において、エピソーマルiPS細胞由来の上皮と間葉細胞の再構成による方法の他に、ヒト口腔粘膜上皮細胞とiPS細胞由来間葉細胞の再構成なども検討する予定である。また、Hes1遺伝子の導入により、iPS細胞から上皮および間葉細胞の運命決定の振り分けが可能になる可能性についても、検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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