研究課題
幹細胞を用いた組織再生療法には、幹細胞の維持と再生組織構成細胞の持続的な産生のバランスが非常に重要である。血管内皮細胞は、骨髄組織において造血幹細胞の維持と前駆細胞の産生バランスを保つための微小環境が存在し、血管性ニッチとよばれている。しかしながら、この血管性ニッチが、血管内皮細胞から分泌される様々な因子によって、機能維持されている詳細なメカニズムは不明な点が多い。我々は血管性ニッチにおいても重要な役割を演じていると考えられているWntおよびヘッジホッグシグナルに注目し、未分化間葉細胞における両分子シグナルを解析した。幹細胞を用いた組織再生療法の臨床応用には、生物由来の蛋白などを用いることなく、化学合成可能な小分子化合物が有用であると考えられている。そのため実験にはWntシグナル、ヘッジホッグシグナルのアゴニストをそれぞれ用いた。Wntアゴニスト、BIO(GSK3beta 阻害剤)をマウス間葉系幹細胞細胞株C3H10T1/2に添加すると、幹細胞マーカーであるNanog, Oct3/4等の発現が増強した。さらに、C3H10T1/2細胞にBIOを作用させた後、骨芽細胞分化誘導因子である骨形成蛋白BMP2を添加すると、非常に効率よくさらに短期間で骨芽細胞に分化誘導できることを見出した。また、ヘッジホッグシグナルのアゴニストとして、現在開発段階であるHH-Ag1.3およびHH-Ag1.7を用いた。C3H10T1/2細胞にHH-Ag1.3およびHH-Ag1.7を添加すると、両アゴニストは細胞のアルカリホスファターゼ活性を増加させ、未分化間葉系細胞を骨芽細胞に誘導する事が明らかとなった。そこで骨芽細胞後期分化でみられる基質石灰化を検討してみると、BMP2存在下にて、HH-Ag1.3の石灰化誘導能が低いのに対し、HH-Ag1.7は強力に基質の石灰化を誘導させる能力がある事が明らかとなった。また、HH-Ag1.7の石灰化増強作用は、Runx2遺伝子の下流のOsterixの発現増強に起因することも明らかとなった。
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