従来、筋組織と骨組織は機械的刺激を介して関連をもつことが知られている。実際、骨組織は、機械的刺激によりその形態を変え、内部の構造をも変化させる。その機序として骨組織中の骨細胞が機械的刺激の感受細胞として働き、骨表面の骨芽細胞および破骨細胞に骨形成、骨吸収を行うように指令している。一方、筋組織は骨に付着することによって、機械的刺激を発揮しており、その両者は位置的にも密接している。よって、筋組織と骨組織の間に何らかの液性因子が働くと仮定した場合、その密接した3次元的環境から、筋組織から産生されるミオカインは、効率よく骨組織に影響を与えることができると考えられる。一方、近年、ミオカインの一つであるミオスタチンの遺伝子が欠損したマウス、牛では、筋肉量が倍増することが報告された。筋肉量の増加と共に骨の成長も報告されたが、これは、従来の考えに従って、増加した筋肉によって生じた機械的刺激に伴った変化と解釈されてきた。しかしながら、本年、アメリカ骨代謝学会にて、機械的刺激の影響の少ない頭蓋骨においても、その骨量の増加がみられることが報告された。これは、これまで検討されたことのない、筋組織から骨組織への機械的刺激を介さない新たな経路の可能性を秘めていると考えられる。そこで、本年度はミオスタチンの骨形成作用を検討するために必要な、生きた骨でのカルシウム応答を計測するための系、ならびに形成された骨の微細構造を検討するにあたって必要な3次元骨構造解析において成果が上がったので、その論文1報ならびに講演4報の実績を残すことができた。
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