研究課題
昨年までの研究成果により、歯の移動に伴って誘発される侵害受容機構や口腔内組織の変性が定量可能な実験モデルが確立された。本年度はこのモデルにおける侵害受容と、矯正治療時に臨床的な歯の移動に伴い惹起される疼痛を検証した。10‐11週齢Wister系雄性ラットの上顎右側切歯と右側第一臼歯(M1)間に50 gのコイルスプリングを装着し矯正力を負荷した(n=5)。装着1、3、7日後(各々 D1、D3、D7と表記)に全身麻酔下で電気刺激用電極を両側M1付近に留置し、同部刺激誘発開口反射の閾値を測定した。実験終了後、組織切片を作製しTRAP染色とGFAP染色後、多核破骨細胞とサテライトグリア細胞(SGC)の局在を各々観察した。歯の移動距離は、シリコーン印象後に上顎模型を作製し、2/100 mmまで計測可能なキャリパーで測定した。右側(移動側)の開口反射誘発閾値は、左側(非移動側)に比較して、D1‐D3間に有意に低下し、D7にほぼ両側同程度となった。M1の近心移動量は、D1:0.12±0.14㎜、D3:0.19±0.05㎜、D7:0.42±0.02㎜と増加し、D3‐D7に大きな移動量をみた。またTRAP陽性の多核破骨細胞は、D1ではほとんど観察されず、その数はD3‐D7間に増加した。移動初期の右側における開口反射誘発閾値の低下は、右側三叉神経節のSGC活性を伴っていた。歯の移動後に起こった移動側の開口反射閾値の低下は、数日間継続し、7日後には非移動側と同程度になった。一方、圧迫側における破骨細胞による歯槽骨吸収は、移動開始数日後以降に活発となり移動距離も増加した。これらの変化は、矯正臨床における歯の移動に随伴する症状や所見と近似していた。以上より、本動物モデルは臨床的な歯の移動に伴う発痛を再現し、発痛メカニズムの解明や分子制御を考える上で有用な評価系と考えられる。
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