研究課題
永久歯先天欠如は、顎顔面領域に見られる最も頻度の高い疾患の一つである。その原因に複数の転写因子の変異によって優性遺伝形式を呈する家族性に引き起こされることが知られている。一方、近年“Exome sequencing(全エクソンシーケンス)”により、家族性稀少疾患の原因遺伝子同定の成功例が報告されている。“Exome”とはヒトゲノムにおけるすべてのエクソン領域を示し、その配列に含まれる変異が疾患原因の約85%を説明すると推定されている。本申請課題の目的は次世代シーケンサーによる全エクソンシーケンスにより永久歯先天性欠如、特に日本人に多い下顎前歯先天性欠如家族性症例においてその原因遺伝子を同定することにある。申請者らは歯科矯正治療を受診する外来患者3683名について永久歯先天性欠如と家族性について検討した。永久歯先天性欠如を有する数家系を見出すとともに、下顎前歯のみに限局した先天欠如を有する家系の存在を確認、リストアップした。そして、下顎前歯に限局する先天性欠如2家系について全エクソンシーケンスにより原因遺伝子を探索した結果、候補3遺伝子変異を同定した。興味深いことにその内のひとつはエナメル質形成不全を伴う先天異常の原因遺伝子の一つであった。下顎前歯に限局する先天欠如は日本人に多く、欧米人に少ないとする人種差が存在する。しかし、今現在、その原因遺伝子探索結果の報告はなされていない。日本人における発症率・出現頻度が高いことは、本研究成果が国民に還元できるところが大きい。約10%もの児童に認められる永久歯先天性欠如にもかかわらず、動物実験をも含めたこれまでの長期かつ膨大な歯の発生学的研究において先天性欠如の歯種の違いをもたらす機序の解明は未踏のままである。今後、永久歯先天性欠如の遺伝子変異から空間的制御機構(永久歯先天性欠如の歯種の違いを生み出す機序)の解明につなげたい。
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