Dentin Matrix Protein 1 (DMP1)は主に骨細胞や象牙芽細胞で産生され硬組織の石灰化に関与する細胞外基質タンパク質である生体で重要な機能を有すると考えられるDMP1であるが、一方で進化速度が速い(アミノ酸配列が変化しやすい)という、分子進化学的に矛盾した分子である。本研究では両生類のアフリカツメガエル (Xenopus laevis ; X. laevis)におけるDMP1のクローニングと遺伝子の構造解析および発現解析を行い、分子進化学的にDMP1の特徴の解明を試みた。得られた塩基配列より推定されたDMP1のアミノ酸配列は哺乳類や爬虫類と比較して相同性は低いものの、推定されるタンパク質等電点、アミノ酸構成比率や性質は既知のDMP1と酷似していた。一方で、このタンパク質の重要なクリベージサイト周辺やC末端の部位は保存されていた。RT-PCRでは顎骨、脛骨、大腿骨骨頭においてDMP1が特異的に強く発現していた。in situ hybridizationでは、mRNA発現が骨芽細胞には認められず、骨細胞のみに認められた。歯においては象牙芽細胞において発現が認められたが、軟組織には発現していなかった。しかし、X. laevisの歯胚においてDMP1の発現は初期から中期の歯胚の象牙芽細胞に多く認められ、後期になると発現が認められなくなることが明らかになった。これは、哺乳類と異なり、X. laevisにおいてDMP1は象牙質の形成のみに関与しその後の象牙質の添加や維持には関与しないことが示唆された。以上のことからX. laevisの DMP1は骨や歯の形成及び骨の恒常性の維持に関与しており、各々の発育段階に応じて発現が厳密に調節されその発現様式もほぼ保存されていることが示された。
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