本研究は小児の精神的ストレスを短時間で正確かつ非侵襲的に把握する方策を見いだすことを目的とし、ストレス診断のためのバイオマーカーとして唾液中に分泌されるmicroRNAを見いだすことである。以下に平成25年度の研究実績を示す。 1.被験者の選定と材料:平成24年度の解析対象のストレス群と対照群の唾液からmiRNAを抽出・精製した。精製後のmiRNAは蛍光標識し、キャピラリー電気泳動により純度を確認後、蛍光peakからAUC(Area Under Curve)が一定になるような8例ずつを各群から選出し、2および3の解析を行った。 2.発現プロファイルの比較:microRNAマイクロアレイにより、1で選出した被験サンプルの発現プロファイルを網羅的に解析した。結果を統計学的に解析したところ、10種のmicroRNAにおいて発現パターンが異なる可能性が示された。 3.バイオマーカー候補の検討:2で絞り込まれた10種について、異なる被験者で構成されたストレス群24名、コントロール群19名における発現比較をリアルタイムPCRによって行った。その結果、平均値では2群間での明らかな有意差は示されなかったものの、各個人においてはマーカー候補すべてにおける2つずつの組合せでは有意に相関していた。 したがって、これらは組合せによるクラスターマーカーとして、非侵襲的に採取した唾液からの判定に有用となる可能性が示唆された。
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