研究課題/領域番号 |
24659921
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
和泉 雄一 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60159803)
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研究分担者 |
小林 宏明 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50396967)
竹内 康雄 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60396968)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 歯周病 / 早産 / 切迫早産 / 自己抗体 / 抗リン脂質抗体 |
研究概要 |
歯周炎は切迫早産や早産のリスクファクターと考えられている。しかしながら、その発症メカニズムには不明な点が多い。我々は、歯周病原細菌が抗リン脂質抗体症候群の標的分子であるβ-2糖蛋白質上のTLRVYKへの交差反応による血栓症が悪化しているという仮説を立て研究を行った。 95人の妊婦(47人の切迫早産妊婦と48名の健常妊婦)で研究を行った。歯周疾患の臨床症状と歯周病原細菌を測定した。TLRVYK蛋白と歯周病原細菌において相同性の高いタンパク(Aggegatibacter actinomycetemcomitans 上のSIRVYK、Porpgyromonus gingivals上のTLRIYT、Treponela dentocla上のTLALYK)との交差反応をELISA法にて測定した。血清中の高感度CRP、抗TLRVYK IgG抗体価、抗SIRVYK IgG抗体価をELISA法にて測定した。 細菌相同性のある蛋白に対するウサギ特異抗体の実験の結果、anti-SIRVYK IgG抗体のみがTLRVYK蛋白に反応した。多変量解析の結果、抗SIRVYK IgG抗体は切迫早産の診断と有意な関連があった。95名の被験者のうち、14名(14.7%)が早産であった。早産は抗SIRVYK IgG抗体価が平均より高い群において、低い群よりも高い割合を示した。47名の切迫早産のうち13名が早産となった。回帰分析から過去喫煙、P.gingivalisの存在、抗SIRVYK IgG抗体が早産と有意に相関していた。 これらのことから、P.gingivalisの感染とSIRVYKへの抗体反応が切迫早産と早産に関連している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
23歳から44歳の105人の妊産婦をこの研究に組み入れた。適合基準として、全身疾患がないこと、少なくとも15本の歯があることを設定したところ、10人が除外された。95人の参加者のなかで、47人が切迫早産となり、48人が健常であった。これらの患者さんからのサンプリングは終了した。自己抗体になる可能性のある歯周病原細菌を認識する3種類の抗体を作成し、TLRVYK領域との交差反応を確認した。このデータにより、臨床サンプルの解析においてA.a.菌のもつSIRVYK領域に絞って研究を行うことができた。患者血清中の抗TLRVYK IgG抗体、抗SIRVYK IgG抗体濃度を測定し、臨床サンプルの実験結果をまとめ、データ解析も終了した。また、研究データをまとめ学会発表をおこなった。途中までの結果で論文を作成し、Arch Gynecol Obsetに投稿し、アクセプトされている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の目標として、血清抗体価のさらなる解析と患者胎盤を用いた研究を予定している。現在までの予備実験において胎盤から歯周病原細菌が検出されていることが判明した。これまでにA.actinomycetemcomitance, P.gingivalis, T.denticolaの3菌種の存在をPCR法にて計測してきた。それらに加えて、P.intermedia, F.nucleatum, T.forsythia菌の細菌の存在を探索する予定である。そして、定量的な分析のためにRealtimePCR法を導入する。このRelatime-PCRの測定精度を向上させるため新たなスタンダードを作成する。 また、血清に対してもあらたな歯周病原細菌に対する抗体価を測定する。現在までにA.actinomycetemcomitance, P.gingivalis, T.denticolaの3菌種に対する血清抗体価を測定してきた。それらに加えて、P.intermedia, F.nucleatum, T.forsythia菌の血清抗体価を測定していく。これらにより、血清抗体価と細菌の存在が、早産や切迫早産に与える影響を分析していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は解析を中心とした研究を予定している。 歯周病原細菌を正確にRealtimePCRで測定できるように標準直線をベクターで作成する。この標準直線作成として、TAクローニングのキットを中心とした分子生物学的実験材料を計上した。TAクローニングキット、培地、コンピテントセルにてクローニングを行い、MiniPrepとPCR法、およびシークエンスを行うことにより、RealtimePCRで使用可能な標準の鋳型を作成する。また、ベクターの大量回収にはMidiprepもしくはMaxiPrepにて行う。 血清中の歯周病原細菌に対する抗体価を測定するための消耗品を計上している。P.intermedia, F.nucleatum, T.forsythia菌の超音波破砕抗原を作成するための消耗品を計上した。また、血清抗体価測定をELISA法にて行うため、96wellプレートなどのプラスチック消耗品、2次抗体、発色基質などの試薬代を計上している。 また、本年度では成果発表を行うための旅費を計上している。
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