研究課題/領域番号 |
24659927
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
滝口 尚 昭和大学, 歯学部, 講師 (60317576)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 超音波 / バイオフィルム / 加速度 |
研究概要 |
インプラント周囲炎の発症に、バイオフィルムの付着が関与していることが知られており、インプラント周囲炎が一旦進行し、フィクスチャーが露出すると、表面に付着したプラークを除去することは極めて困難となる。そこで、バイオフィルムの除去を目的に、超音波の振動加速度を用いる流水式超音波洗浄機の開発に着手した。 開発した機器は、周波数400kHz、消費電力12W、流水量300mL/分を有する流水型超音波機器で、評価サンプルは、チタン試験片(鏡面加工、粗面加工)にバイオフィルムを形成させた物を用いた。その結果、超音波照射前後の試験片の状態を、走査型電子顕微鏡(SEM)とデジタルマイクロスコープで観察・評価すると、チタン試験片に超音波を180秒作用させると、バイオフィルム残存率は鏡面加工で約19.0%、粗面加工で約16.2%であった。 また、超音波照射後のSEM像では、球菌、桿菌等からなる細菌塊はほぼ完全に除去されていた。本研究から、流水式超音波洗浄法は非接触にも関わらず、水を介した超音波エネルギー(粒子加速度)が、歯およびインプラントの表面に到達し、微生物を除去することが可能であることが確認された。このことは、日常の臨床で用いられている超音波スケーラーの先端から発せられるエネルギーは、必ずしもチタン表面からプラークを除去することに十分とは言えないことから、バイオフィルムを除去することにおいて、流水式超音波洗浄法は既存の除去方法を補完することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発している流水式超音波機器は、既存の装置を小型化し、ヒト口腔内でも利用可能な大きさに近づけることができた。また、バイオフィルムの評価方法は、ヒト口腔内を利用した、ex vivoバイオフィルムモデルが確立できた。このため、ワット数、周波数、照射時間など、各パラメーター変更による、除去効果の違いを定量化できるようになったことが、本装置開発の大幅な前進につながっている。その他に、超音波治療機による、生体安全性の基準に生体の温度上昇に関する項目があるが、本機器の使用による温度上昇は確認されていない、なぜなら、本装置の特徴の一つである、流水下での使用のため、温度上昇による組織障害の心配はない。以上のことから、本年度の目標はほぼ達成できていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1、間欠的照射方式の検討:本装置の洗浄効果向上および、生体安全性を考慮して、超音波照射を間欠的照射を検討する。 2、エンドトキシン濃度の評価:露出歯根面に付着した、エンドトキシンに対する効果を検討するため、ハイドロキシアパタイト試験片に付着させた口腔内バイオフィルムモデルを利用し、術前、術後を評価する。 3、バイオフィルム除去試験片の組織適合性の評価:口腔内バイオフィルムを付着させた試験片に流水式超音波を照射後、試験片をラット腹腔に7日間埋入し、組織適合性を埋入インプラント周囲の肉芽組織層の形成量と炎症性細胞数を観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒト口腔内バイオフィルムモデルが早々に確立できたことと、歯肉組織およびインプラント体に体する温度変化には、本装置が影響を与えないことが早期に解明できたため、一部の研究費を次年度予算に組み込む。 次年度は、洗浄パターンを検討するため、連続照射、間欠照射(Duty10%-90%)の条件下で、洗浄効果および組織安全性をマウスを用いて検討する。また、露出歯根面のエンドトキシンを考慮して、洗浄前後での、エンドトキシン濃度をバイオフィルムモデルを用いて検討する。さらには、本装置で除染後のインプラント体の組織適合性試験を検討するため、ラット腹腔内での影響を検討する。
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