研究課題/領域番号 |
24659931
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
笹野 高嗣 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (10125560)
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研究分担者 |
佐藤 しづ子 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (60225274)
庄司 憲明 東北大学, 大学病院, 講師 (70250800)
飯久保 正弘 東北大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (80302157)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 味覚障害 / 味覚検査 / 味覚受容体遺伝子解析 |
研究概要 |
現在、味覚障害の診断は電気味覚検査、および甘味・塩味・酸味・苦味の基本4味を用いた濾紙ディスク法による味覚閾値の測定によって行われている。当該年度において、我々は、第5の基本味である「うま味」に対する検査法が欠落していることに着目し、「うま味」感受性検査法の開発に着手し成功した(論文実績の項参照)。すなわち、うま味の主成分のひとつであるグルタミン酸ナトリウム(MSG)の濃度を6段階に設定し、その閾値を調べる方法である。この方法は、テレビ取材を受け2つのNHK番組で紹介された。 次いで、客観的なうま味検査法の開発に着手している。まず、舌乳頭の擦過試料に味細胞が存在することを味細胞に特異的に発現しているGustducinをマーカーとして免疫細胞化学染色法により検討した。次に、House Keeping Geneであるβ-actin、上記Gustducinおよびうま味受容体遺伝子の特異的プライマーを選定することにより擦過試料のリアルタイムPCR解析を行った。さらに、増幅したPCR産物のシーケンス解析を行い、ターゲット遺伝子の増幅を確認した。その結果、舌乳頭擦過試料に味細胞が含まれること、および、リアルタイムPCR法を用いたシーケンス解析によりヒト由来のβ-actin、Gustducinおよびうま味受容体遺伝子が特異的に増幅されることが示された。また、ヒト舌へのうま味(MSG)刺激により、T1R1およびT1R3受容体遺伝子の発現量が刺激直前に比べて刺激1時間後に有意に増加することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
味覚障害の治療を行ってみると、基本4味(甘酸塩苦)の味は分かるが美味しくないと訴える患者がいる。このような患者では、美味しくないから食べたくない、体重が減少するなど健康状態に問題を呈する場合が少なくない。しかしながら、現在、うま味に関する味覚検査は欠落している。そこで、まず、うま味検査法の開発に着手し成功した(研究実績の項参照)。この結果は、NHK番組に2回(平成25年2月26日および3月13日)に取り上げられ、東北大学病院でのみ検査可能なうま味検査として照会された。また、国際誌にも掲載される業績となった。このような状況から鑑みて、うま味検査法の開発は国民の健康寄与する業績になったと思われる。したがって、おおむね順調に経過していると自己判断している。
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今後の研究の推進方策 |
テイストディスク法を用いた「うま味感覚閾値の新たな診断法」については実験が終了うぃ、満足な結果が得られたため国際誌に投稿する準備を進める。 また、「客観的なうま味検査法の開発」については、①舌乳頭の擦過試料に味細胞が存在することを味細胞に特異的に発現しているGustducinをマーカーとして免疫細胞化学染色法により検討、②House Keeping Geneであるβ-actin、上記Gustducinおよびうま味受容体遺伝子の特異的プライマーを選定することにより擦過試料のリアルタイムPCR解析を行う、③増幅したPCR産物のシーケンス解析を行い、ターゲット遺伝子の増幅を確認した。その結果、舌乳頭擦過試料に味細胞が含まれること、および、リアルタイムPCR法を用いたシーケンス解析によりヒト由来のβ-actin、Gustducinおよびうま味受容体遺伝子が特異的に増幅されることについて、n数を増やし確実な実験結果を得る、④ヒト舌へのうま味(MSG)刺激により、T1R1およびT1R3受容体遺伝子の発現量が刺激直前に比べて刺激後に変化するかどうかについて検討する。以上の項目等について検討し、世界初の「うま味検査法」の開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、前年度に得られた結果についてn数を増やし、確実な結果を得ることを目的とする。そのため、試薬等の消耗品について前年度の研究費と同様な使用を行う。また、得られた研究成果について公表するため、雑誌投稿料、英文校閲のための費用、学会発表のための旅費等を計上する。
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