研究課題
歯周病菌は歯肉上皮細胞や歯肉繊維芽細胞に侵入し、感染の進行と慢性化を図る。一方、宿主細胞はエンドサイトーシス経路などのメンブレントラフィック機構を用いて侵入細菌を分解する。この「細菌 vs メンブレントラフィック」の戦いの転機が歯周病の発症において大きな影響を与えている。メンブレントラフィック機構のひとつであるオートファジー(自食作用)とは、細胞の中を掃除することで病気が起こるのを防ぐ仕組である。細胞の中に壊れたミトコンドリアや古いタンパク質などが溜まったり病原体が侵入したりすると、細胞の健康が損なわれ、その結果アルツハイマー病、発がん、心不全、糖尿病、感染症、炎症など多岐にわたる病気が起こる。それを防ぐために細胞はオートファジーという仕組みを持っている。オートファジーを担うオートファゴソームは、膜で包まれた球形のオルガネラであり、必要に応じて細胞の中に現れ、細胞にとって有害な上述のものを取り込んで分解する働きを持つ清掃マシーンのような存在である。どこからともなく現れ役目を終えると消えるため、どこで造られているのかがこれまで40年近く論争の的になっていた。最も強力な歯周病菌でもあるP. gingivalis は細胞質内へと侵入しオートファジーにより捕獲され分解・殺菌される。我々はオートファゴソームの形成起源について検討を加えた。その結果、オートファゴソームが別のオルガネラであるミトコンドリアと小胞体が接触する場所で造られていることを見出した。今回の研究成果によって、40年来の謎が解かれ、異なるオルガネラが協力して他のオルガネラを産むというこれまで知られていなかった現象が明らかとなった。オートファジーの仕組みが分かったことで、本研究は大きく進展した。
1: 当初の計画以上に進展している
今回の研究成果によって、40年来の謎が解かれ、異なるオルガネラが協力して他のオルガネラを産むというこれまで知られていなかった現象が明らかとなった。オートファジーの仕組みが分かったことで、本研究は大きく進展した。本研究成果は英科学誌「ネイチャー」(電子版)に、ロンドン時間の平成25年3月3日18時(日本時間の平成25年3月4日午前3時)に掲載され、社会的反響を呼んだ。
P. gingivalis (歯周病菌)とオートファジーとの関連性について調べる予定である。P. gingivalisがどのようにオートファジーによって認識されているのか、つまり細胞内に侵入したP. gingivalisを初期段階で認識する細胞側因子に着目して今後の研究を展開していく予定である。
全ての研究費は物品費(試薬、プラスミド等の購入)に給する予定である。
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すべて 雑誌論文 (17件) (うち査読あり 13件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 5件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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