研究概要 |
本研究では、口腔清掃が困難な状況下において、口腔内環境のセルフケアの補助因子として特定機能食品であるノンシュガーガムを咀嚼することにより唾液中の細菌数や細菌構成および口腔の不快症状におよぼす影響を検討することを目的とした。 本年度は、一定期間口腔清掃が困難な状況下におかれる陸上自衛隊の野外訓練に参加する20歳以上の者から無作為に抽出した55名を対象に、昨年度実施された無作為化比較試験のデータを解析・論文化した。得られた結果として、ガム摂取群(介入群)はガム非摂取群(対照群)に比べ、介入試験前後の口腔の不快症状(口臭、不快感、口腔乾燥感)の増加量が有意に少なかった。また、介入試験前後で唾液中総菌数が3倍以上に増加する割合は、対照群と比較して介入群で有意に低かった。このことから、口腔清掃が困難な状況下においてノンシュガーガムを摂取することは、口腔の不快症状悪化と唾液中の細菌数増加の両方に対し抑制作用を持つ可能性が示唆された。 さらに、唾液中の細菌構成について16S rRNA遺伝子を用いて網羅的な解析を行ったところ、構成する細菌種および主要な細菌の構成比率に大きな変動は認められなかった。一方で歯周炎との関連が指摘されるFusobacteirum, Tannerellaといった菌属の構成比率の減少がガム摂取群において認められ、ガム非摂取群では認められなかった。このことから、ノンシュガーガムの摂取が歯肉の健康状態に何らかの影響を与えている可能性が示唆された。今後は、災害などの非常時や職務上口腔清掃が困難な状況下において、口腔清掃の代用としてノンシュガーガムの使用が期待される。
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