研究課題/領域番号 |
24659940
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研究機関 | 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室) |
研究代表者 |
石川 正夫 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室), その他部局等, 研究員 (50597250)
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研究分担者 |
石井 孝典 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室), その他部局等, その他 (40597291)
武井 典子 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室), その他部局等, 研究員 (50556537)
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キーワード | 介護老人保健施設 / 口腔機能 / 口腔機能向上プログラム / 認知機能 / MMSE / 要介護度 |
研究概要 |
日本は急速に高齢化が進展しており認知症も急速に増加することから、認知症の発症予防および症状緩和は極めて重要な課題となっている。そこで本研究では、口腔機能向上プログラムが高齢者の認知機能に及ぼす効果を明らかにするため、初年度はグループホーム入所者を対象に1年間の口腔機能向上プログラムを実施し、認知機能の変化を調べた(指標はMMSE:Mini-Mental State Examination)。2年目は、より多人数が入所している介護老人保健施設入所者を対象に比較研究を実施した。 対象者は、福岡県と長崎県の某介護老人保健施設の入所者で、6カ月間の口腔機能向上プログラムに参加し、かつ初回検査におけるMMSEの得点が10以上の60名である。口腔機能としては開口度、唾液湿潤度、咀嚼力、RSST(反復唾液嚥下テスト)、オーラルディアドコキネシス(カ音)、口腔清潔度(カンジダ菌数)を検査した。検査結果に基づいたオーダーメードの口腔機能向上プログラムを提案し、実施に際しては研修を受けたヘルパーが支援した。その結果、福岡の施設では、介入群、対照群ともにMMSEの有意な低下は認められなかった。口腔機能については介入群でRSSTが有意に改善した(対照群では改善を認めず)。一方、長崎の施設では、MMSEは介入群、対照群ともに有意な変化は認められなかった。口腔機能は、両群でオーラルディアドコキネシス(カ音)が有意に改善した。その他、両群の改善項目に差は認められなかった。長崎の施設では、介入3カ月の段階で施設の事情により、その後の支援・介入を中止したことにより、介入群と対照群での口腔機能の改善に群間で差が認められなかったと考えられる。 2施設の結果から、口腔機能向上プログラム実施による認知機能の低下抑制の効果に関しては、結論がでなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の介護老人保健施設での調査では、2施設60名(介入群31名、対照群29名)の入所者に対しして口腔機能向上プログラムを実施し、口腔機能ならびに認知機能に与える影響を比較検討した。 1施設では、介入群で口腔機能のRSSTが対照群に比べ有意に改善したが、他方の施設では施設内の事情により結果を確認できず、両群で大きな差は認められないという結果であった。今回の調査より、入所者・介護スタッフともに日常的に交流がある一つの施設内で、介入群と対照群を分けて調査することの難しさが確認された。さらに、介入開始後に口腔機能向上プログラムの継続が困難となるトラブルが発生したことから、今年度の達成度は50%と考える。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度から行ったグループホームにおける長期介入研究で得られたノウハウを基に、H25年度は、グループホームに比べて、多人数が入所している介護老人保健施設の入所者を対象者として、より客観性の高い評価結果を得るため、対照群を加えた比較研究を行った。介入群に対しては、口腔機能検査結果に基づいたオーダーメードの口腔機能向上プログラムを提案し、さらに、口腔機能向上プログラムの適切かつ確実な実施に向けて、施設職員に対する研修を行い、介入研究を実施した。さらに、対照群に不利益が生じないように介入研究後にクロスオーバーで介入を行った。 しかし、介護老人保健施設は在宅復帰を目指しており、長期にわたる認知機能の低下抑制効果を検証するフィールドとしては、難しいことが判明した。そこで、H26年度は、高齢者の多くが在宅高齢者であることから、軽度認知機能障害者(MCI)あるいは、認知機能が低下していない高齢者を対象者に同様の研究計画に基づいた調査を実施する予定である。具体的には、沖縄県宮古島市の行う集う会(生きいき教室)に参加している在宅高齢者を地域別に介入群と対照群に割付し、事前に口腔機能および認知機能検査を行い、口腔機能検査結果に基づいたオーダーメードの口腔機能向上プログラムを提案し、その実施に対する支援を行いつつ介入調査を実施する。介入5カ月後に、初回と同じ検査を実施し、口腔機能向上プログラムの認知機能に対する効果を確認する。また、対照群についても、不利益を生じさせないように介入調査後、要望に応じて支援を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度は、日本の高齢者の大多数を占める在宅高齢者に対する口腔機能向上プログラムの効果を確認することであり、H24年度のグループホームでの介入研究、H25年度の介護老人保健施設での比較研究の成果を基に、宮古島市福祉部地域包括支援センター、地元歯科医師会の協力を得て研究計画を作成した。その際の打合せのための交通費、新たな認知機能評価法、口腔機能向上プログラム支援のためのマンパワーへの人件費が必要となった。 H26年度は、沖縄県宮古島市の行う集う会(生きいき教室)に参加している在宅高齢者を地域別に介入群と対照群に割付し、比較研究による認知機能検査および口腔機能検査を実施する。また、介入群については、歯科衛生士による月2回の口腔機能向上プログラムの支援を行い、5カ月間介入後の認知機能、口腔機能の変化を確認する。 そのための予算として、直接経費122万円(交付内定額120万円)のうち、旅費が50万円、物品費30万円、研究成果投稿・報告書作成費30万円、その他10万円を予定している。
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