研究課題/領域番号 |
24659942
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
川口 孝泰 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40214613)
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研究分担者 |
島野 仁 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20251241)
佐藤 政枝 首都大学東京, 健康福祉学部, 准教授 (30363914)
東 ますみ 兵庫県立大学, 応用情報科学研究科, 教授 (50310743)
川上 康 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70234028)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 遠隔看護 / バイタルサイン / 指尖脈波 / 非線形時系列解析 / カオス分析 / 脈波ゆらぎ |
研究概要 |
研究代表者らは、過去10年間にわたって「遠隔看護システム」の開発に携わってきた。当該システムは「次世代型遠隔看護システム」として10年前に特許出願(特願:2001-31802)した。この10年の間に社会での情報教育や情報インフラの整備が画期的に進み、様々な分野でのデバイス開発が行われてきた。しかし、医療においては、対象の複雑性・個別性や守秘性・安全性などの観点から、ソフト開発やインフラを活用した医療用デバイスの開発が遅れている。本研究は、急速な対応が求められている在宅医療のにおいて、遠隔医療・看護を実施するために必要な「バイタルサイン」から得られる感性的な情報を、安全かつ簡便・非侵襲的に測定・伝達し、看護技術として活用できる新技術の提案と実用化に向けた検証を行うことを目的としている。 24年度においては、先ず作成した「加圧脈波装置(バイタルセンサー)」の測定精度及び信頼性に関する基礎実験を行った。当該装置は、手首に身体装着式のバイタルセンサーを付け、自動的に指先に空気圧を送ることができるもので、加圧部分の細動脈・静脈の血流量の変化、および末梢血管の自律神経反応を計測する装置(ウェアラブル・バイタルセンサー)である。データの計測は、赤外線通信で携帯端末(i-Pad2)に送信し、その結果を高次元非線形時系列解析によって分析し、生体情報を得るものである。 さらに実証実験として、就労者中の日内における疲労状態の観察を、当該装置で測定可能かどうかについて検証した。その結果、本装置での解析手法として使用したカオス指標が、日内の疲労感や一時的な感性的変化を捉えるための生理的な指標となり得ることも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、指先から捉えられる脈波を、高次元非線形時系列解析によって健康情報に関わる感性的な予兆を捉え、遠隔看護で展開できるデバイスとして、臨床応用に向けて実用化(簡便で正確なデータを得る)可能なデバイスを開発することにある。この発想に基づいた基礎研究については、これまでに研究代表者らが受けてきた研究助成を受け、基礎研究によって実証してきた。 研究計画では、看護実践での実用化を目標とし①急性期患者のためのプロトタイプ(主に高度医療現場での適用)②慢性期患者のためのプロトタイプ(主に在宅療養患者への支援)③日々の健康管理に向けたプロトタイプ(健康管理支援ツール/災害時被災者への健康支援)④ケア提供者への知的支援(在宅でのケア提供者に対する安心・安全な支援ツール)⑤教育指導用の支援(専門分化した医療の中で専門家同士の知的支援交流)現時点では、デバイスを開発し、①~③用のプロトタイプを提案し、臨床応用できるシステム開発に結び付けることを目標に基礎事件を行った。その結果、感性的な短期的予兆と健康状態の把握を捉えることの可能性が示唆された。遠隔看護の実用化と合わせて使用可能なプロトタイプの提案を進めていくとともに、急速にICT化された社会のケア資源として機能させていくための開発につなげていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は、開発したバイタルセンサーの実用化に向けたプロトタイプの基本設計を行う。とくに、対象の個別性に合わせた看護・医療情報を得ていくために、当該装置を導入した場合での介入の有効性を評価し、実用化に向けたプロトコルの作成を行う予定である。具体的な研究計画は、①急性期患者へのプロトタイプ(主に高度医療が必要な方への適用)の構築、②慢性期患者へのプロトタイプ(在宅療養患者への支援)③日々の健康管理に向けたプロトタイプ(健康管理支援ツール)/被災地支援を含む筑波大学附属病院がフォローしている、北茨城地区(とくに震災被災地区の住民)を対象とした診療施設の中に、日々の健康管理ツールとして当該装置を活用した場合の有効性について実用化の可能性を探っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
開発した加圧式脈波装置(バイタルセンサー)と、解析に必要なソフトウェアのさらなる改善のための制作費用が必須となる。実際の運用を考えると、試験的な運用において10台ほどのキットが必要となる。その他、システム設計とプログラム開発を行うために、システムエンジニアからの専門知識の提供を受ける必要がある。そのための費用も人件費として必要となる。また遠隔地での試験的な介入を実施するためには、出張旅費が必要となる。とくに東北などの被災地区への支援を計画しているので、支援者への情報リテラシーに関する教育など、事前の準備のための諸費用が必要となる。 さらには遠隔看護システムの基盤構築にかかる経費も必要となる。ハード部分では貸し出し用の携帯端末、および通信料が必要となる。また、設置するハード機器のセキュリティー保守・メンテナンス、さらにはソフト開発のために、エンジニアの専門的な支援が必要となるために、それらにかかる費用も生じる。 本研究は、挑戦的萌芽によるトライアルの要素が強い計画なので、少人数での試験的な運用となるが、実証段階が終了し、その有効性が保障されることになれば、実際には多くの数のデバイスやシステム拡充のための費用が必要となる。そのためには、この研究によって得られた成果に基づき、特別推進研究などの展開に結び付けられるような形での計画も視野に入れて研究を進めていく予定である。
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