研究課題/領域番号 |
24659947
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
兵藤 好美 岡山大学, 保健学研究科, 准教授 (90151555)
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研究分担者 |
田中 共子 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (40227153)
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キーワード | ゲーミングシミュレーション法 / 医療安全教育の開発 / アサーティブな行動 / 「声のかけづらさ」 / 作業中断 / 指差呼称効果 / ヒューマンエラー対策 / 教育効果 |
研究概要 |
【平成25年度】に実施した医療安全教育の開発を報告する。 1)<目的>安全確保のためにアサーティブな行動が望まれる場面を設定してゲームを行った。参加者と共にそこでの心理と行動、課題達成を振り返り、医療エラーの発生機序を確認した。対象は同意の得られた看護学生でゲーム参加者31名。<結果>「声のかけづらさ」があると、聞き返しの行動が抑制され、薬剤選択課題の正解率が有意に低下した。このゲーム環境では、時間的切迫が一層声かけをためらわせていた。その中で尋ねることを諦めなかった人だけが、正解にたどりついていた。医療安全を確保するには、相談がしにくい環境圧力の下でも声をかけ続けるという、アサーティブな行動が重要であることが示された。 2)<目的>ヒューマンエラーの発生と防止を模擬体験で学ぶ研究の一環として、心理学のゲーミングシミュレーションを応用し、作業中断時の指さし呼称の効果を学ぶ教育的ゲームを試行した。対象は同意の得られた看護学生31名。<結果>作業が中断される配薬作業において、作業の正確さ向上に指差呼称が効果を持つことが確認された。指さし呼称は意識向上の効果があるといわれるが、作業中断による注意低下を防止したと考えられる。学習者は指差呼称をより有用と感じ、医療事故に対する危機感もより高くなっていた。配薬過程のヒューマンエラー対策の防止策を認識する教育効果があったと考えられる。 3)<目的>医療安全のゲーミングシミュレーションとして、新人看護師が意見交換の場で先輩看護師からの同調圧力下で意思表示を行う模擬体験をして貰い、医療安全教育としての総括を加えて医療安全教育を試みた。<結果>先輩たちが特定の看護方法を強く主張して同意を求めると、新人が同調してしまう様子が見られた。判断が正しい選択のみならず、誤った選択にも導かれていく現象は、病棟で医療事故につながりかねない可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
毎年、医療安全教育に関するゲームを開発してきており、研究課題は概ね順調に進展していると言えよう。内容についても年々充実したものになってきている。 本年度の収穫は、医療場面におけるアサーティブな行動に着目し、ヒューマンエラー発生のプロセスが、目の前で再現できたことである。さらに時間切迫があると人はどのような行動を取るかが段階的に把握することができた。指さし呼称においても、作業中断下における効果が明らかになり、今後の対策への示唆を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、研究計画の最終年度となる。今後は臨床応用を目指し。教室内だでなく臨床での活用を視野に入れたゲーミングシミュレーションの開発を目指したい。 さらにゲーミングシミュレーションに関する理論や医療事故の要因となるヒューマンエラーに関わる要因等を基礎に包括的なゲーム作成を指向していく。またゲームの種類についても特性・状況ゲームを作成すると共に、個人は勿論、集団での意思決定に関するゲームも精力的に作成していきたい。
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