研究実績の概要 |
《3年間の研究目的》事故の「プロセス性」を重視ゲーミングシミュレーション法の適用を着想した。そして疑似体験型の学習から得る多層的インパクトを構造化し,心理教育型の医療安全教育を創出することを目的とした。 【平成26年度】に実施した医療安全教育の開発を報告する。 <目的>看護師を対象に時間切迫と思い込み,指さし呼称有無の要素を取り入れた物品選択のゲーミングシミュレーション(以降,ゲームと略)を試みた。そして看護師においても学生と同様,心理・教育的効果が確認できるかどうか,検討することを目的とした。 <対象>同意の得られたA病院に勤務する看護師27名。平成26年10月の3日間に実施。 <方法>1)実験群をA:指さし呼称指示あり(図示通り遵守),B:指さし呼称指示あり(普段通りの手順)C:指さし呼称指示なしの3群に分け,群ごとに指示書を渡し物品を選択させた。5種類の物品選択を課し,物品選択正解率に差が生じるかどうかを検討した。2)「医療安全の意識」関するゲーム実施前後の値を分析した。<結果>1.正解率の群別比較では,A群が最も高く82.5%で,B群53.3%,C群48.9%であった。AとB・Cの2群間比較を行った結果,一つの物品で有意差,二つの物品で傾向差が認められた。2 .医療安全に関する意識において,ゲーム実施後は実施前に比べ,「自分は事故を起こす可能性があると思う」等の上昇が認められた。以上,正解結果から゙普段通り゛の手順において,指さし呼称が遵守されていない可能性が示唆された。一方,時間切迫下においても指さし呼称の遵守は,類似物品選択エラー軽減に繋がることが明らかになった。さらに指さし呼称の遵守によって,集中して作業を行える心理効果も生じていた。ゲーム実施後の感想から,医療事故に対する危機感や怖さ,確認や指さし呼称の重要性等の学びも認められたことから,学生と同様な効果が確認された。
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