研究課題/領域番号 |
24659948
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
深井 喜代子 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (70104809)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | めまい / 平衡感覚認知 / フィジカルアセスメント / アセスメント技術 / 多次元モデル分析 |
研究概要 |
平成24年度は、当年度研究計画、研究環境の整備、予備実験、「めまい」のある患者の実態調査を行った。 1.研究準備として体性感覚指標としての皮膚温度計と重心動揺計(家庭用健康計測機器を改良使用)を購入、試用動作確認とデータ取り込み調整を行い、H25年度から予定している本実験の環境が整備できた。 2.サンプルサイズと実験プロトコル確定のために、健康者7名を対象に受動的身体回転直後の重心動揺と「ふらつき感」を調べる予備実験を行った。その結果、「ふらつき感」の自覚と重心動揺軌跡との間には一定の関係があること、「ふらつき感」には「馴れ」や「学習」が関係すること、また「ふらつき感の馴れ」には個別の前庭感覚感受性が関与することが示唆された。これらの予備実験結果から、健康者を対象にさらにいくつかの「めまい誘発実験」を計画し、めまい症状にこれらの要素がどのように関係するかを調べることにした。 3.「めまい症状」の全国調査をWeb調査によって実施した。調査は調査会社に依頼し、全国数百万人の登録者から無作為に抽出した2000人を対象に行った。その結果、約3割が週1回以上のめまいを体験していること、めまい体験者のうち約3割がめまいに悩み日常生活に何らかの支障を来していること、さらに、メニエール病であると答えた者が14%に昇った。この結果は「めまい」に悩む人々は予想以上に存在する可能性を予測させるもので、健康者の一過性のめまい症状を含め、めまい患者の心身の多次元的アセスメントの重要性が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は本格的な全国調査に重点を置いたために、めまいのある「患者」のフィジカルイグザミネーションに着手できなかった。しかし、少数例のめまい患者の非公式の面接を行い、全国調査による問診の要点と併せて、アセスメントの視点を知ることが出来た。また、機器調整等の研究環境も整ったので、平成25年度は倫理審査申請が通過できれば、当初の計画通り、研究が進展する見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は企業研究者の協力を得て、「めまい」時の心電図、重心動揺及び測と種々の感覚器系のフィジカルイグザミネーションを実施し、「めまい」症状を多次元的に観察・測定し、総合的に分析する。特に、物理的重心動揺データと主観的な平衡感覚・位置/定位感覚を比較検討し、何らかの数理的関係性を探る。また、「めまい」症状のある患者に関する調査を全国の関連病院の医師・看護師を対象に実施する。 1.平衡感覚認知要素の組織的測定方法の検討:健康者(15名程度)を対象に、身体回転前後にロンベルグ試験を実施する。計測項目は1)重心動揺、2)視覚・皮膚感覚のフィジカルアセスメント、3)心電図、4)身体認識(問診)5)STAI・POMS短縮版による心理状態の評価を実施する。 2.「めまい」患者を扱う専門職に対する実態調査:「めまい」外来を持つ全国の病院から100施設程度を無作為抽出し、医師・看護師に患者数と対応実績の調査を行う。 3.平成25年度までの研究成果の学会発表を目標にする。 最終年度は、患者の自宅を訪問し、「めまい」症状のある患者の生活状況を具に観察し、可能なフィジカルイグザミネーションと重心動揺の計測を実施する。そして、3年間の研究成果から、「めまい」の系統的アセスメント技法を提案する。具体的には、バイタルサイン、皮膚感覚、ロンベルグ試験などの系統的に収集したフィジカルデータから「めまい」度判定基準(計測要素の数理的関係性を何らかの形で反映させる)を作成し、新たに主観的な「めまい」度判定ツールも開発する。これらの研究成果を国内外で学会発表するとともに国際誌も視野に入れ、論文投稿を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,重心動揺計にかかる経費が予算額を下回ったため,296,645円の残額が生じた。但し,平成25年度から本学保健学研究科検査技術科学分野の北脇知己准教授を研究分担者として加え,重心動揺計測システム開発を行う予定で,それに伴うコンピューターソフト,工学部品,消耗品等が必要となる。よって,その残額は主に次年度以降,北脇氏への分担金に充てる。 平成25年度は研究経費は,調査費として約200,000円,実験消耗品として約200,000円,PCソフト等として約200,000円,人件費(含被験者謝金)として約300,000円,として使用する計画である。
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